眠れるピアノ

本屋でピアニストの神谷郁代さんの著書を立ち読みしていたら、楽器のことに言及しているところがありました。細かい文章は忘れましたが大意はおおよそ次のようなものでした。

コンサートで全国をまわっていると、各ホールにはどこも素晴らしいピアノが備え付けてあるけれども、その多くがほとんど弾かれることなく、大事にしまい込まれているだけの状態なので、どれも鳴らないピアノになっているというのです。

コンサートの直前に調律師が数時間かけて、あれこれやっているうちにピアノはどうにか目覚めてはくるそうですが、それでも本番には間に合わないらしく、とくにコンチェルトなどでは、どんなに力んで弾いても音が埋没してしまうことしばしばだそうです。
せっかく素晴らしい楽器を購入しても、これでは本来の能力が発揮できずに、非常に残念。もっと普段から弾かれるようになればいいのにというような意味の事が書いてありました。

マロニエ君も以前、あるピアニストの手伝いで、録音会場探しのために福岡市近郊のホールを下見して廻ったことがありますが、多くのホールがスタインウェイとヤマハというような組み合わせで、いずれも立派なピアノ庫を備えて湿度管理までやっていますが、なにしろピアノ自体が使われていないので、弾いてみるとほとんど眠ったような音しか出さなかったり、それなりには弾けても、とてもこの楽器の本来の力ではないな…というようなピアノを何台か触って、考えさせられたことがありました。

いえいえ、これはホールばかりの話ではありません。
我が家のピアノも、いつも練習に使う片方だけを弾いているので、もう一台は年中ほとんど寝ている状態です。やはり楽器は生き物ですから、適当に鳴らしてやらなくてはいけないということを、この神谷郁代さんの本を読んで、思わず自分に向けて警告されたようにドキッとしてしまいました。

調整が未完なので敬遠している面もありましたが、今日は調整がもう一度入るので、そうしたら少し弾いてみようと思います。やはり健康維持のための適度な運動はピアノにも必要なようですね。

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