張りぼて

マロニエ君は現在、ちょっとしたアレルギー系の治療(大したものではありません)があって近所の医院に通っていますが、そこの先生に別の医師を紹介され、ぜひ一度行ってみてくれといわれたので、気は進みませんでしたが日ごろお世話にもなっているその先生の顔を立てるつもりで出かけていきました。

そこは、福岡市の百道浜にある新しい大きな病院で、今の新しいトレンドなのか、まるでホテルと見まごうような作りで一時話題になった病院です。
正面玄関を入ると自動演奏付きのグランドピアノが置かれていて、高い吹き抜けにはシャンデリア群が輝き、とにかく今どきの人には「贅沢で特別な病院」と感じさせるような作りになっています。受付もロビーもホテル風の構えで、そもそもマロニエ君は基本的にこういう上っ面の豪華趣味が好きではありません。

受付を済ませ、二階の専門ごとにわかれた外来の診察室に向かいますが、従来の病院くささを排した装飾的な内装や調度品などは、これでもかとばかりに続きます。診察室の前は各科によってガラスで仕切られ、それぞれが空港のVIPラウンジのような感じで待合室になっています。

今回の診察は予約されたものでしたから、時間の少し前には着くように行きましたが、そこに他の患者はゼロで、要するにマロニエ君だけでした。
それなのに、時間になっても一向に呼ばれることはなく、「先生はいまこちらに向かわれています」などと何度か受付の女性や看護士が言いに来ましたが、ずるずると時間ばかりが経過し、ついに30分を超過した段階で帰ろうと決断しました。それを看護士に伝えると、あわてて「いま来られましたので(??)、診察室へどうぞ」ということになりました。

中に入ると、中年の女医が見るからに横着な様子で椅子に座っていて、嫌な直感が働きました。
むやみに上から目線で、遅刻を詫びるでもなく、いきなり横柄な調子で症状の話をはじめました。語尾に「デス/マス」もつかない無礼な物言いがさらに神経にさわりました。
こういうことの看過できないマロニエ君は、向こうの質問を遮り「今日のお約束は××時ではありませんでしたか?」というと、「しってるよ。」それがどうした?といったいささか硬直気味の開き直りでした。

こういう礼儀もなにもないような人に自分の体を診てもらおうとは思いませんので、こちらの考えを言って席を立ち、一階の受付で事の顛末を説明して帰宅しました。
どんなに借金して豪華な箱物を作り「患者さま」などと言ってみたところで、あれでは『仏作って魂入れず』の喩えの通りで、豪華さがかえって虚しく泣いているようでした。えてして今の世の中とはそんなもの。
立派なホールを作っても、地元のカラオケ大会しか使い道のないのと同じです。

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