いまさら繰り返すまでもないほど何度も書いてきたことですが、マロニエ君はとにかく人前でピアノを弾くということが自分でもちょっと異常じゃないかと思うぐらい苦手です。
一昨日もある会場でサークルの定例会が行われましたが、そこは普段より比較的広い会場ではありましたが、それでもホールではないのでピアノと客席との距離がすごく近いわけで、これが心理的にもの凄い圧迫になるのです。
だいたいピアノサークルで利用する会場というのは狭いところが多く(もちろんホール借り切りというわけには行きませんから当たり前なのですが)、人の目と存在がめちゃめちゃ至近距離で、そんな中で弾かなくてはなりません。
ちょっとした自己紹介も嫌なマロニエ君にとっては、こんな見つめてくれと言わんばかりのシチュエーションで順番に歩み出てピアノを弾くというのは、まさに恐怖そのものなので(たぶん心臓にも悪いだろうし)、いつもそのたびに「これを最後に見学者になろう」と思うほどです。
ところが、そんなマロニエ君ですが、極限的に耐え難い状況と、そこまででもない状況があるということがわかりました。
それは機会があって、何度か本格的なホールのステージ(もちろん客席には数人の関係者以外はいません)で弾いてみると、これが思ったほどキンキンには緊張しないことがわかり、これは自分でも非常に驚いたことでした。
その理由は幾つかありますが、まずホールというのはとにかく圧倒的に広い空間であるために、開放的で息がつまるということがありません。ステージに置かれたコンサートグランドも、はるか小さな楽器に見えるほどです。
それに音がことごとく遠くへやわらかに飛び去って行くので、思わず心が澄みわたるような気分になるのです。
とりわけマロニエ君にとって一番の有難い点は、ピアノの近くに人がいないということ。
客席に少々人がいても、ステージとはかなり距離があり、床の高さも照明も厳然と区分けされ、ステージが独立した空間のように思えるためか、意外に自由で快適に弾けることがわかりました。
要するにちょっぴり自分の世界を作れるのです。
ピアノサークルでは、マロニエ君ほど極端ではないにせよ、こういう状況を苦手に感じている人もいる反面、口では「緊張する!」なんて言いながら、どうしてどうして、大いに楽しんで弾いている人もいらっしゃるのは何度見ても驚きます。
よほど神経の構造が根本的に違うのでしょうが、実にうらやましいことです。