ブリュートナー

以前、ニュウニュウの弾くショパンのエチュードで使用されたピアノがどうも変なので、てっきり中国製のピアノかと思っていたところ、読者の方からブリュートナーであることを教えていただきました。
日本向けのジャケット写真では、ピアノのメーカーの文字が消されてしまっているようで、同じ写真を使用した中国版のジャケットでは、ブリュートナーの文字がくっきりと写っていることもわかりました。

なぜそのようなことをしたのかはわかりませんが、あまりにも音が良くないのでメーカーからクレームが来たのかもしれないとも思いますが、これはあくまでもマロニエ君の勝手な想像で、真相はわかりません。

こういうことにはめっぽう詳しい、四国のピアノ技術者の方にも問い合わせをしていたところ、話はブリュートナーの輸入元の方の耳にも達して、本来のブリュートナーの音を聞くに値するCDを教えていただきました。そういえばプレトニョフもモーツァルトのソナタやベートーヴェンのピアノ協奏曲全集ではブリュートナーを使っているようですし、故園田高広氏も新旧のブリュートナーで録音したCDもありました。

教えられたCDは、アルトゥール・ピッツァーロといういかにもイタリア人らしい名前のピアニストが奏するシリーズで、ともかくそのうちのひとつを購入しました。
リストのハンガリー狂詩曲全集ですが、ここに聴くブリュートナーはそれはもうニュウニュウのショパンで使われたピアノとはまったく別物というべき、なるほど優れたピアノでした。

無意識のうちにスタインウェイの音に慣れきっている耳には、新鮮な魅力さえ感じました。
ベヒシュタインほどの骨太さや剛直さはないかわりに、つややかでふくよかな美音が鳴り響き、それでいて根っこのところではガチッとした鳴り方をするあたりは、さすがはドイツピアノの血筋だと思わせられます。

とりわけリストのハンガリー狂詩曲との相性が良いのは思いがけない発見で、ブリュートナーのやや古典的な発音がノスタルジックでもあり、リストの中でもとくに荒々しい民族性の溢れるハンガリー狂詩曲ですが、ブリュートナーの音色が作品の生臭さを抑え、作品の核心だけをうまく取り出して聴こえてくるようです。
もちろんピッツァーロ氏の演奏の妙によるところもありますが、決してそれだけではない、ブリュートナーの持って生まれたピアノとしての潜在力と、調整の素晴らしさ、録音の良さと相まって、ピアノの音を聴くためだけにも、何度も聴きたくなるCDに仕上がっているように感じました。

ブリュートナー」への1件のフィードバック

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    同じピツァーロの録音でラヴェルvol.2も素敵だと思います。

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