不健康な日本

チリの鉱山落盤事故で地中に閉じこめられた作業員の引き揚げ作業がついにはじまり、ひとりまたひとりと生還する様子を世界中が見守っているようですね。
彼らが取り残された場所はなんと地下約700メートルだそうで、東京タワーを二つ重ねた距離だといいますから、気が遠くなるような深さで、そこに孤絶した人達を救い出そうというのですから、国を挙げての救出作業はまさに映画さながらの大作戦です。

およそ70日もの長期にわたって地底で生き延びてきた作業員達の勇気と逞しい生命力もさることながら、このニュースを見るにつけ、ことごとく日本とは多くの常識や文脈が違っていることを嫌でも感じないわけにはいきませんでした。

まずは国のリーダーである大統領の動き。
自ら現地へ赴き陣頭指揮を執る姿は、明るく健康的で覇気に満ちています。
中国に気兼ねして尖閣での衝突ビデオすらまだ「見ていない」と言い、いつも下を向き、答弁は書類の棒読みで、なすべきことが何一つできない無能亭主のような我らが首相およびその内閣を連日見せられる我々には、ただため息がでるばかりです。

チリの救出作戦は、引き上げられ生還した人達が例のカプセルから出て、家族と抱擁するシーンなどがまさに至近距離から撮影されて、ただちに全世界へとばんばん配信され、その様子が手に取るようにわかりますが、これがもし日本だったらと考えると、とてもじゃありませんがそんなことはできないでしょう。
まずテレビカメラは至近距離はおろか、現場の遙か遠くまでしか近づけず、肝心の場所は厳重な立入禁止となり、なんとか望遠レンズでその様子を探ろうにも、おそらくはむやみやたらとあの忌まわしいブルーシートが張り巡らされて、すべては無意味に遮断され、生還の様子を目の前のカメラからライブで見ることなど限りなく不可能だろうと思われます。

警察をはじめ、人が見たいと思うニュースの現場では、まるで嫌がらせのようにブルーシートがすべてを覆い隠すのは、いろいろと理屈や言い分はあるのでしょうが、悪しき日本の慣例になり果てました。要するにあれは日本人の陰険さ、不健康さ、臆病、内向性のあらわれのように思います。
一般の目にさらすべきではない陰惨な現場などではないものまで、なんであれ片っ端から隠して見せないようにするのは、集団的責任逃れと関係者の暗い快楽のようにしか思えません。

チリのニュースは、もちろんあの絶望的な状況から人が生還するという感激もありますが、やたら規制まみれの日本に住むマロニエ君としては、それに加えて全体に漂うあの南米の、いかにも人間らしいストレートでオープンな世界を垣間見るだけでも心がスッとするようです。

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