草戦争-番外編

草に限らず、通常は美しいと感じる緑でさえも、植物というのは至近距離で接してみると、意外に不気味な一面があるものです。木の成長も思ったより早く、気がついたときには枝葉は深く生い茂り、幹は一段と太さを増していたりして、いろいろと不都合な場面も出てくるわけです。
隣の木の実が落ちてきて、それが発芽するのもちょっと油断していると、けっこうな勢いで成長してしまい、ある程度になると引き抜くのも一苦労で、ついに諦めてのこぎりで切ったことも何度もあります。

さて、人によってはお好きな方もいらっしゃるとは思いますが、マロニエ君はツタというのがあまり好きではありません。
もちろん普通にパッと見た感じだけでなら、葉の形は可愛らしく、なかなかの雰囲気さえあると思います。
モネのジヴェルニーの屋敷のように、ヨーロッパの田舎などではこれを上手く利用した、まるで絵のような佇まいを作り出すこともあるようで、彼らはもともとそういうセンスにも長けているのでしょう。

しかし自宅に限って言うなら、ツタの類がどんどん這い回っていこうものなら気持ちが悪くて仕方がありません。
我が家の周辺は若干の斜面になっていて、裏には高さの違うマンションが聳えています。その境界はマンション側が作った幅20メートル、高さ4メートルほどのコンクリートの壁になっていて、ひとつにはこれのお陰で深夜まで大した気兼ねなくピアノが弾けるというメリットもあるのですが、この壁に近年、つやつやとしたなんとも見事なツタが這いはじめ、ついには幾方向にものびてかなりの規模になりました。

これはたぶん、他人が見ればきれいだとおっしゃるかもしれませんが、毎日の生活の中で着実にその勢力を拡大してくる得体の知れない生命力を見ていると、意外にグロテスクで耐えられなくなってきました。
最後には広大な壁一面をツタの葉がウロコのように覆い尽くし、昆虫など生き物の巣窟になるのは目に見えています。

そこで、これ以上放置はできないということになり、いまのうちに撤去する決断をしました。
ところが、ちょっとやそっと引っぱるぐらいではびくともせず、その強力な接着力の強さも驚きでした。
とうとう軍手をはめて、両手でばんばん引きはがしていきましたが、なんと45Lのポリ袋がいっぱいになるほどの量になっていました。

ときどきこのツタに完全に覆われ尽くした緑のオバケのような建物を見かけることがありますが、あの類は見ただけで身震いがします。

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