鯛焼き

車でとある交差点を曲がっていると、いつもそこに鯛焼きのちょっとした有名店があるのが視野に入りました。
以前から存在だけは知っていたので一度買ってみようかと思いつつ、店は交差点のど真ん中で、車族のマロニエ君にとってはきわめて挑戦的な場所に位置する店でした。
交通量も多く、周辺はとうてい車が置けるような状況ではないのでずっと諦めていたところ、なんのことはない、少し先にこの店の駐車場があることがわかり、それではということでとりあえず買ってみることにしました。

マロニエ君は基本的に、博多では回転焼きといわれる甘味(一般的には今川焼き、太鼓焼きなどという丸形の鯛焼きの親戚みたいなもの)が好きなのですが、これが意外とどこにでもあるわけではなく、確実に買えるのは天神のデパ地下なのですが、これも人気があってしばしば行列になるのが甚だおもしろくありません。

東京から広がったと思われる卑しき文化のような行列というのがマロニエ君は心底嫌いで、ホロヴィッツのコンサートのチケットとでもいうのならともかく、たかだかちょっとした食べ物を買うのに、いちいち時間を使って行列に堪え忍ぶという自虐行為がどうにも馴染まず、行列を見たら反射的にパッと避けてしまいます。

ところが人によっては行列を見ると逆に並ばずにはいられないという御仁もいらっしゃるというのですから、いやはや世の中いろいろです。
長い行列の場合、それが果たしてなんのための行列かもわからないまま、ともかく最後尾に並んでおいて、しかる後にその行き着く先がなんであるかを探って確認するというのですから、ここまでくればあっぱれですね。

さて、ついに買ってみたその鯛焼きですが、家に持ち帰ってさっそく食べてみたところ、多少時間が経っていたということはあるにせよ、あまりにも外側がガチガチに固くて、なんじゃこりゃ?と思いました。
なんとか一口食いちぎっても、固いのでなかなか喉を通らず、お茶をのみながらやっと一個を食べおおせました。

中の白あんも雑でモサモサしていて、マロニエ君的にはぜんぜん美味しいとは思えず、なんであんな店が有名店なのかまるでわけがわかりません。
実はこの店もしょっちゅう歩道に人が行列しているので、味はそれなりかと思っていたのですが、到底納得しかねるものでした。
おまけに固くてやみくもにアンコを噛んで食べたせいか、しばらくのあいだ糖分で奥歯が痛くなるほどで、えらく損をした気分になってしまいました。

友人に言うと「文句の電話でもしたら?」といいますが、いかなマロニエ君でもまさかそこまでしようとは思いません。ただし、行列はいよいよ当てにはならないと思い定めた次第です。

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