世代の特徴

マロニエ君の家の周辺は、街の中心部にほぼ近い位置にもかかわらず、やや丘陵地になっているためにテレビ電波の受信状態が悪い地域ということで、以前からケーブルテレビを使わざるを得ないエリアでした。

さて、このたびデジタルテレビに移行したら、ひとつ困ったことが起こりました。
衛星放送は地デジには含まれないために、わざわざ昔のアナログ放送に切り替えないとこれを見ることができず、しかも来年7月までの命というわけです。マロニエ君にとってはNHKの衛星放送は音楽番組が多いので、普通のテレビはあまり見ないかわりに、これは必要不可欠のチャンネルなのです。

ケーブル会社に相談すると、衛星放送受信用のパラボラアンテナを付けるしかないとのことで、しぶしぶ価格などを調べていたところ、ある有料放送の受信契約をするとアンテナは望外の低価格で設置してくれることがわかり、テレビ購入時にもすすめられてこれに決め、さっそくその会社から工事に来てくれました。

ところが、あらわれたのは意外なほど年輩の、はっきり言えば完全におじいさんという感じの人で、見るなり大丈夫だろうか…と内心思いましたが、この人が設置場所の下見から線の取り回しやなにやらを、いかにも元気良くテキパキとやり始めたのには驚きました。

それに、この世代の人はよく話をするのも今どきでは大きな特徴だと思いました。
話というのも仕事とは直接関係のない、雑談でちょっとお世辞を言ってみたり、自分が屋根から落ちて足を痛めたなどといった、いわば無駄口なのですが、それが度を超さずにパッパッと入ってくるので、雰囲気がとても和むわけです。

一般的にこの手の仕事で現場を回っている人は20〜30代の人が多いように思いますが、彼らは必要以外のことはまず絶対に口を利きません。いわゆる無口とか寡黙というのとも少し違って、ごく自然な人との交流が出来きず、どこか余裕がないという感じです。仕事も型通りで応用がきかず、いつも伏し目がちでコミュニケーションにもまるで覇気がありません。

それに引き換え、このおじいさんは足などもすこし引きずっているようですが、いやはや元気で溌剌として大したものでした。
うちに来たのは昼過ぎでしたが、午前中数軒回って、これからあとも4軒まわると片付けながら言っていました。
「歳なんだけど、私は仕事が好きで、とくに現場が好きなんでね」という言葉が印象的でした。
荷物や工具を満載したワゴン車を一人で運転して、次の訪問先を書類で確認すると元気に去っていきました。
思いがけなく、お年寄りに元気づけられたような格好でしたが、心地よい残像が残りました。

折しも史上最年少という若いお兄さんが福岡市長に当選しましたが、どうなりますことやら。

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