遠くなるピアノ

ネットを何気なく見ていると、思いがけない記事に出くわすことがありますが、読むなり気分が曇っていくようなものを目にしてしまいました。

ピアノの価格に関するもので、国内産のピアノは(すべてかどうかはともかく)毎年10%!もの値上げを繰り返しているという記述があり、まったく知らなかったので、単純に、素朴に、驚きました。
GDPの成長率も思うよう伸びないのに、毎年10%アップとはおだやかではない話です。

値上げの理由はいろいろあるようですが、需要の減少、熟練工の不足、天然資材の枯渇、物価上昇、賃金の値上がり、さらには長引く円安なども絡んでいるようで、もしかすると中国市場の極端な低迷なども影響しているかもしれません。
しかも、この「毎年値上げの方針」は、当分収まる気配がないというのですから深刻です。

以前であれば、日本人にとってピアノは国内メーカーのおかげもあり、その気になればなんとか手に入れられるものでしたが、それらも近ごろではずいぶんと立派なプライスとなり、さらにこの先そのような値上げが続いたら、時が経つほど縁遠い存在になる。

もし毎年10%の値上がりが続くと、5年後には手ごろなグランドでも400〜500万円、プレミアムモデルではその遥か上を行く価格となり、10年後には1000万円を越えるものも珍しくなくなるだろうとの予測までされており、開いた口がふさがりませんでした。

フェイクが横行するネットの世界、はじめは「まさか!」と思いつつ、K社の価格改定をみると確かに全機種がほぼそうになっているし、Y社も時期や値上げ幅にはばらつきはあるものの値上げ方向であることに変わりなく、この先、ピアノは文字通り高嶺の花になってしまうのか?
将来ピアノを買う(買い換える)という目標があっても、年々ピアノのほうが空高く離れていくようで、なんたることか!と思いました。

そこにあったアドバイスのひとつは、欲しい人は一日も早く購入すべき!というもの。
長期ローンを組んだとしても、毎年10%の値上がりよりはbetterというもので、反論できないシンプルな理屈でした。
個人的には新品に未練はないけれど、中古ピアノも新品と価格連動するから相場全体が上がっていくだろうし、なんとも息苦しい時代に突入したものです。

試しに電卓を打ってみたら、毎年10%ずつ高くなると5年後には1.6倍、10年後には2.6倍で、100万円は260万円に、300万円は780万円になるとわかり、クラクラしました。

遠くなるピアノ」への13件のフィードバック

  1. 毎年値段が上がっていることが知っていましたが、気が付いたら121cmの(廉価タイプではない)アップライトピアノの価格がK社でも100万円近く、Y社は100万円をこえていて、現在の貨幣価値に直した昭和40年くらいのピアノと変わらなくなっていて驚きました。
    嬉しくないですね…

    • 「ピアノは高い物」という本来の場所に戻りつつあるということでしょうか?
      本間ひろむ氏著の『日本のピアニスト』(光文社新書)によれば、カワイの発表によれば2022年の3月期連結決算は、経営利益が73億円を超えて過去最高、売上高は(実に)857億円と書かれており、すっかり強気になって値上げしているのだろうか?とも思いました。

  2. やはり需要の減少も一因があると思います。
    現代でピアノが置ける環境は、庭園に囲まれた一軒家か、防音設備が整っている密集地の住宅街かマンションに限られています。

    だから電子ピアノ(私はピアノでも別物だと思う)の需要が増えているのでしょう。リーズブルで音楽を楽しむには良いと思いますが、アコースティックに触れないと特にクラシックの分野では天と地の程の差があります。

    中古ピアノも高騰していますが、それに便乗とまでは言い難いですが、調律の料金も上がっています。

    私が山奥に引っ越したのも街には、主人の趣味のスポーツカーと私の趣味のピアノが一番の一番の要因です。
    隣近所がかなりはなれているせいか夜中でもピアノを思い切り弾ける環境で、街の音大生がよく弾きに来らので、私にとっては良い刺激にもなります。

    ピアノも高嶺の花になりそうですね。

    • たしかに、昔のように無邪気にピアノを買って練習なんて今はできませんね。
      音問題は、いったんこじれると近隣で修復のできない争いにも発展するようです。
      夜中でも思い切り弾けるとは、素晴らしい環境をお持ちなんですね。

  3. 新品ピアノの値上がりが毎年10%とは驚きました。
    この円安ですと買い取りされた中古ピアノの海外流出も益々加速しそうですから、これだけのピアノ大国で日本人にとってピアノが遠い存在になる事態が本当に起こりそうで心配ですね。

    • 多少の値上がりはわかりますが「毎年10%」は強烈すぎますね。
      海外へのピアノ流出は、過去にすさまじい規模だったようで、国内在庫ももう干上がっているでしょう。

  4. 私が学生だった頃、ヤマハC3が確か約180万円でした。そりゃあ、時代とともに何でも値段は上がるものでしょうが(当時はトヨタのヴィッツがエントリーグレードは100万円を切っていましたね)、それにしてもピアノ購入のハードルが上がりすぎです。そこへ来て、近年は静岡県に「エンシュウ」というブランドの、わりと求めやすい価格のピアノが出てきたようで、気になりますね。いつか、このブランドについてもマロニエさんのお考えを伺いたいものです。

    • これを機に、国内メーカーでも昔の良質な材料で作られた中古ピアノを見直し、再生する気運が高まるなどすれば、ピアノの楽器文化も少しは成熟するんじゃないかと思います。古民家が改修されておしゃれに生まれ変わるように。
      エンシュウは触れたことありませんし、今後もそのチャンスはあまりないでしょうね。
      ロープライスが売りのようですが、そのエンシュウも「値上げ」というのを見た覚えがあります。

  5. 私も「エンシュウ」ピアノが気になりネットやらYouTubeで見ましたが、ロープライスの謎が解けました。
    とういうか真実性はどうかと思いますが、ピアノの命でもある響板が合板だそうです。
    なんか疑いますね。

    生で聴くのが最良ですが、一応動画での演奏を聴きました。
    ピアノに関してあまり詳しくないのですが、辛口に申し上げて好みの音ではないですね。

    • 私も昨日、YouTubeでエンシュウの動画を10本近く見てしまいました。
      個人的には、アップライトのほうがまだいいような印象でした。

      経験上、ネットは音もかなり正確なところを伝えてくるようで、実物で印象が覆ったことがないのは感心します。
      ただし、スマホの小さなスピーカーは厳しいですが。

  6. ネットの音は確かによくなりましたね。家のコンポでCDを聴くよりネットの方が(ヘッドフォン装着)音が良い場合があります。

    私もマロニエさんがおっしゃているように「エンシュウ」ピアノでアップの方が音は良かったように思います。パワーもありました。

    実は言うと家のディアパソンもグランドより132のアップの方がパワーも音質も良いので、どういうことかさっぱり意味不明です。
    特にモーツァルトの作品を弾くと断然アップの方が合っているように感じます。

    • 個々のピアノのことは何ともいえませんが、UPのほうが小さくまとまりやすいのかな?という気がしています。
      また、UPは響板が垂直かつ奏者の目の前なのでダイレクト感は感じられますね。
      さらに132はUPとしては最大クラスなので、余裕もあるのではないですか?

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