このままピアノ価格が値上げを繰り返して、手に入れることが難しくなればなるほど、中古や廉価なピアノが注目される可能性は高いでしょう。
ただ、始めからロープライス目的で作られるピアノに一抹の不安を覚える人は少なくない気がして、かくいう私もその一人なのですが、その不安は中古ピアノの比ではない予感がします(あくまで予感です)。
中古ピアノは根本が良いものであれば「直す」という道があるのに対し、材質や作りそれ自体に問題がある場合、打つ手がないからです。
今や有名ブランドの高級機種でも、部分的に木材以外の素材が使われていることは周知の事実として囁かれていることです。
それは天然資源の枯渇だなんだと表向きはいわれますが、個人的にはもっぱらコストではないかと考えています。
いま、木以外の素材が使われている部分というのは、いちおう直接音には影響しない、もしくは影響の少ない部分なのだろうとは信じたいところですが、その一線が守られているかさえ確かなことはわかりません。
譜面台や足やペダルユニットが天然木でなくてもいいとなれば、生産する側は都合がいいはずです。
当節、天然資源の枯渇だ地球環境だと言えばだれも反論できないし、いかにも納得の得られやすい話のように聞こえますが、建築資材や木を必要とするあまたの製品など、そのとてつもない消費規模に比べたら、たいした数でもないピアノのパーツが作れないほど、この世の木材が枯渇しているなどとは、私にはとても思えないのです。
ただ、天然木はピアノのパーツにするまでには水分除去から木工作業など、多くの手間ひまがかかるわけで、それを別の素材でガッチャンと型にはめて作って済むのなら、比較にならないほど低コスト、しかも製品として安定したものがいくらでもできるでしょう。
では直接音に関わる部分とはなにかといえば、響板、駒、フレーム、ボディ、フェルトや弦などということになりますが、躯体部分が透明な樹脂製のピアノがあるように、要は何を使ってもいちおうピアノにはなるし、セオリー通りの構造につくればそれなりのピアノの音は「出る」わけで、欧州では化学素材の響板の試作などもされているようです。
それをおもしろいと見る向きもあるかもしれませんが、真っ当なピアノがほしいと願う人にとっては疑心暗鬼が広がって怖い話でもあります。
また、粗悪なピアノ中には、ベニア合版の上に白っぽいいかにもな杢目のシールを貼って響板として使ったピアノもあるようで、裏を返せばそれでも音や音階はいちおう出るわけだから、闇は深いといいますか…ほとんどホラーですよね。
楽器にとって使われる材料は大事な要素でしょうね。
金管楽器と木管楽器の質感の違いに耳を傾ける際に、ピアノはどちらで鳴ってるか考えることがありますが、やはり木を通して放たれている音という印象が強いです。古いピアノはそれがより顕著ですね。
響板やボディなど主要な部分が天然木でないピアノは、電子ピアノと同じ並びで、せめて「合成ピアノ」として別のカテゴリーで打ち出してもらえないものでしょうか。(子供たちが何もわからずこういうピアノで一生懸命練習するとしたら不憫です…)
ピアノの音にどれだけ金属的な要素が介入してくるかは、メーカーによっても違うところでしょうね。
演奏も人によって弦楽器的、打楽器的といろいろに分かれますし。
「木を通して放たれている音」ですか!
思わず膝を打つ名言ですね、まさにそういうことだと思います。
有名ブランドの高級機種でも、音に関係ない部分は木材ではないとは驚きました…。
マロニエさんが仰るようにコスト削減の一択だと私も思います。
現代はコスト削減して、それらしく上手くあしらうための技術は超一流と言いますか…黒い分厚い塗膜を剥がすと一体どんな代物が出てくるんだろうと考えたら不気味な気がします…。
化学素材の響板ですか!…!せめて試作で終了してもらいたいです。
昔の一貫して天然木材を使って丁寧にピアノを造りあげてこられた職人さん方は、この惨状をご覧になってどうお感じになるのだろうと複雑な思いがします。
それらをピアノと名乗ってほしくありませんよね。合成ピアノ、まさしくその通りだと私も思います。
メーカーから公式に明かされることは決してないようですが、なにかのきっかけでそういう事実がわかり、関係者も目を白黒させるようです。
私も「合成ピアノ」と呼びたい派ですが「ピアノがすべて木で作られなくてはいけないという定義があるわけではないでしょう?」と開き直られたら、どうしようもないですよね。
「ボディパーツはすべて木製です」と書かれているわけでもないですし。