ロゴ

以前、May4569さんからいただいたコメントの中に、ピアノメーカーのロゴと音の関係に触れておられましたが、たしかにそうだな…と思いました。
人は「名前のような人間になる」というのをむかし聞いた覚えがありますが、ピアノもそうかもしれません。

たしかにスタインウェイ、ベーゼンドルファー、ベヒシュタイン、ヤマハ、ブリュートナーなど、多くのピアノではロゴがなんとはなしにその音や楽器の性格まで表しているように感じます。

中には、伝統的な美しいロゴが変更されて、味気ないものになったりすることもあり、非常に残念に思うことも。

昔のグロトリアンは、ほれぼれするほど美しいロゴだったものが、諸事情から変更になったことは仕方ないにしても、それがただ活字を並べただけの無味乾燥なものになっているのは、ピアノが素晴らしいだけに理解できないものがあります。

ブリュートナーも伝統の流麗な筆記体のものがあると思えば、ただの平凡なフォントのものもあるのは、いったいどういう区別なのやら、これまたよくわかりません。

スタイリッシュで目を引くと仰せのファツィオリは、まさにグッドデザインでさすがはイタリアだと思いますが、音とロゴが一致しているか?となると、私にはどこかしっくりこないものが残ります。
このあたりは各人の感じ方にもよりますが、個人的にはもっとあのロゴのような音であってほしいのです。

時代を反映して個性を出さないよう配慮されているようで、まさに今どきのコンテスタントの演奏のように、だれからも幅広く受け容れられて、アンチを生まないための用心深さを感じてしまうところがもどかしく残念です。
今どきはビジネスのことまで周到かつ分析的に考えるから、まさにコンクールと同じで、まんべんなく加点が得られるよう中庸に躾られているのでしょう。
イタリア的な奔放と豪奢を期待していると、やや肩透かしを喰らうようです。

シゲルカワイはピアノの素晴らしさに対して、ロゴはどうなんでしょう。
とくにスタインウェイのライラマークの位置に、ピアノの形をした枠の中にSKの文字が嵌めこまれたアレは何なのか、まるでわからないし、それが鍵盤蓋やサイドはもちろん、なんと突上棒の途中とか、椅子、譜面台にまで入っているのは…??

ベヒシュタインは、以前は笑わないドイツ人みたいな四角四面なゴチック体で、それが一回転して個性のようになっていましたが、最近のロゴは少し細身になり、ちょっとだけ今風になったというか、頑固なお父さんより息子のほうがフレンドリーになったような感じでしょうか。

ヤマハはまさにヤマハであって、海外に行った人が帰りの空港で鶴のマークを見ると安心するそうですが、同様にあのロゴの前に座ると心が落ち着く人も多いのかもしれません。

ピアノにとってのロゴはまさに顔のようなものだから、非常に大切なものだと思います。

ロゴ」への11件のフィードバック

  1. マロニエさんのアップが以前より早くなったので(嬉しい悲鳴)的確なコメントが追いつかないですね。

    ピアノ展示場で、側面にロゴがある以外は、それぞれのメーカーの特徴に詳しくないので、鍵盤蓋のロゴで試弾したくないメーカーと試弾してみたいメーカーが予めインプットされています。

    試弾前からロゴでワクワク感と高揚する、ファッションに例えればブランドに左右されているな、と感じます。

    海外ピアノが普及されていない小学生時代は、ピアノといえばY社かK社が主流で、貧しいながらもY社の121のウォルナットのピアノがありました。
    ある日、小さな楽器店に楽譜を買いに行ったところ、鍵盤蓋の開いた状態で置かれていたピアノのロゴが分からずオーナーにディアパソンと教えられ、試弾を勧められ、今まで聴いたことのない音に虜になりました。
    その店には大橋も置いていました。

    価格的にディアパソンの方が若干リーズナブルだったので、両親を説得し、それ以降はディアパソン一筋です。グランドは自身で購入。

    だから、展示場では大橋やディアパソンのロゴにはビッビッときますね。
    ベーゼンドルファのロゴも流暢な字体で音も流暢ですね。

    ベヒシュタィンの頑固な笑わないお父さんよりフレンドリーな息子になった文面には、すごく共感いたします。
    若干、音も痩せたように感じますが…。

    ファッションの分野でもイヴ・サンローランはとても残念です。
    あの書体に威厳というかフランスを感じさせられましたが、サンローランが存命されていたらどうお思いになるでしょうか?

    • たしかに、ロゴを見ただけで触れる意欲を失うことはありますね。
      それもブランドに左右されているといえそうですが。
      私がディアパソンを初めて知ったのは通っていた音楽院でしたが、生徒が練習するツェルニーがなぜか厚みのある音で鳴っているのに耳が引き寄せられました。
      最近本で知ったのですが、井◯基◯氏がこのメーカーにも目をかけておられたらしく(鶴の一声の時代ですから)使われていた理由がやっとわかりました。

  2. コメントを取り上げてくださりありがとうございます。

    ベヒシュタインの以前のロゴは「笑わないドイツ人」というくだりに思わず笑ってしまいました。
    実際、性格も頑固ですよね。こちらがご機嫌を探り探り・・・の関係になるような。またそれがいいんですけどね。
    愛想良くならなくてもいいのになぁと思います。

    • いつも有意義なコメントに感謝しています。
      古いベヒシュタインの頑固さは、まるで信念がひとつの塊になったようで、学ぶこと教えられることがたくさんありそうですね。
      おっしゃるよう、変に時代に迎合せず毅然としていて欲しいところですが、時代がそれを許すかどうか…。

  3. ロゴの分析、とても面白かったです。
    グロトリアンやブリュートナーの何の変哲もないものに変わったのは、権利の問題等色々あるのでしょうが、非常に残念な気持ちと疑問もありました。
    仰るようにロゴは奏者にとって最初に対面する場所でピアノの顔でもありますよね。
    あの特徴もなく弾いてみたい気持ちを削がれるようなロゴは、満遍なく中庸にとにかくアンチを生ませない今どきの考えですか…。
    コンクール等の審査の為の弾き方等ともリンクしているんですね。つまらない世の中のように思いますが、長く生き残る為にはやむを得ないのでしょうかね。

    SKの少女漫画のようなロゴの方はなんとか見慣れたのですが、マークは幼稚で特別なひねりもなくそのまんまというか、(日本車のマークみたい)もっと洗練されたベヒシュタインのようなシンボルマークは生み出せなかったのだろうかと思いました。
    しかもそれは一つでいいと思うのに…あっちにもこっちにもあって、金太郎飴のようにしつこくて私には蝉がへばり付いているようにも見えてしまいました。
    …こんな事言うとカワイさんに怒られますね。すみません。

    • ロゴの力は大きく、会社や製品のイメージを左右するので、とても大事ですよね。
      良いピアノであればあるほどそれにふさわしい魅力的なロゴであって欲しいです。
      いいピアノだとわかっていても、ロゴがいやで候補から落ちるということも人によってはあるでしょう。

      「少女漫画のようなロゴ」「マークが蝉のようにへばりついている」は、あまりに言い得て妙で、当分そのイメージを引きずりそうです。

  4. SKの「少女漫画のようなロゴ」、おっしゃる通りですね。
    私の中であの書体は時代遅れの感が強いです。貴族の招待状に見る字面のようで、それがかえって垢抜けない印象を与えているような…。
    ロゴで損するのはもったいないですね。

    • もう少し気の利いたネーミングで、節度ある美しいロゴが与えられていたら、もっと高い評価が得られていたのでは?
      あのロゴは、どなたかが仰っていた「お姫様スタイル」の延長線上にあるセンスだと思います。
      もしヤマハが高級シリーズを「TORAKUSU YAMAHA」などといったら、みなさん戸惑うでしょうね。

    • 私も首がもげそうなほど頷きました。そうです、まるで70年代の少女漫画のイメージです。貴族の招待状!的確過ぎてこれまた首が転がり落ちそうです。…。

      あのロゴでいくのだったら、この際マークは意味不明なSKマークより剣や十字架などの紋章でばっちり決めた方が潔いかもと思ってしまいました…。
      音色とはチグハグになりそうですが…。

      すみません…ついあれこれと妄想ばかりで失礼しました。

  5. あくまで個人の感想ですが、スタインウェイのロゴは、やはりスタイリッシュで洗練されていると思いますし、ファツィオリのロゴは、やはりオシャレに感じますし、ヤマハはやはり合理的な感じがしますし、SKは、がんばってオシャレに寄せようとしたけどちょっとやはり本物のヨーロッパ文化のオシャレには寄せ切れなかった感じがします(失礼しました)。今回もマロニエさんの考察に首がもげそうなほど頷きながら読んでしまいました。シンプルな書体のディアパソンやオオハシは、大橋幡岩さんの理念なのですかね、良い音に余計なものはいらない、的な(的外れな感想かも。スミマセン)。興味深い話題でした。これからも楽しみにしています。

    • たしかにディアパソンのロゴは、角丸の飾らない小さめの文字で、大橋さんの謙虚な姿勢を表しているように思いますが、最後に「OHHASHI」としてご自身の名前をピアノに冠した時は、文字もわずかに大きくなり、そこに最後の意気込みのようなものをさりげなく感じますね。

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