続・プレイエルに呼ばれて

昨日のプレイエルの余談です。

実は、この古民家に着いたときから薄々感じていたことがあるのですが、それは昔、母や叔母達がこのあたりを車で通るときに戦時中祖母達が疎開した家がまだあると話していたことでした。
とはいっても、ずいぶん昔のことで、走っている車の窓ごしに見ただけですから、具体的にどの家ということまではマロニエ君には正確にはわからないままでした。

カーナビの命じるままに走ってきていよいよ目的地に近づくと、明らかにそのエリアであることがわかったので、おやっと意外な気がしていたわけです。この気分は帰宅するまでずっとつきまといました。

家に帰るなりさっそく母に話をしたところ、なんとその古民家は戦時中、マロニエ君の曾祖母ら数人が戦禍を逃れて一足先に疎開をしていた家そのもの!であることが判明し、まだ子供だった母達も当時たびたび博多からそこを訪れたということで、家の姿形まで正確に覚えているのにはびっくりしました。

そして、そこへまた70年近い時を経てマロニエ君がこうしてピアノを見るためにそこを訪れることになろうとは、なにかの因縁めいたものを感じました。

その築180年という古民家もたいへん大きく立派なもので、なんと母の記憶によれば現在の喫茶店部分に当たるところが曾祖母達が疎開で一時期暮らした部屋があった場所であることもわかり、まるで曾祖母がマロニエ君を行かせてくれたような気さえしてしまいます。

今度コンサートで演奏される方もその家のご子息で、こんな偶然があるのかと深い感慨を覚えました。

あたりは文字通り一面の緑で、建物のすぐ脇には小さな山の斜面が迫り、その頂上近くには写真でしか見たことがないような巨大な桜の木があり、まるで屏風絵のようなその威容は思わず息をのむような存在感で、その桜の巨木がこの一帯の主のごとくで圧巻でした。

ピアノに関しての補足ですが、昔のモデルの復刻ということで、ルノワールの絵に『ピアノに寄る娘達』という有名な作品がありますが、これは同じモティーフの作品が3点存在し、それぞれオルセー美術館、メトロポリタン美術館、オランジュリー美術館に所蔵されている誰もが一度は目にしたことのある名画ですが、そこに描かれたピアノがこれだということでした。
まあ、昔のピアノには燭台がついているし猫足も木目の外装も珍しくないので、確実にそれが同型のプレイエルかどうかはマロニエ君としては確証は持てませんでしたが、少なくともそういうエピソードもあるようです。

そのプレイエルはこの家の立派なお座敷の床の間横に、響板を縁側に向けて置かれていましたが、この純日本式の空間にクラシックな木目のプレイエルが不思議に調和しているのが印象的でした。
次はぜひコンサートでその音色を聴いてみたいものです。

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