ある技術者さんとの話の成り行きから、大屋根が傷だらけになったGPの塗装の磨きをお手伝いしてみることになりました。
中古ピアノを取り扱うお店に行くと、かなり古いピアノでも外観は新品のようにピカピカに磨き上げられているのを目にすることがありますが、これは一般人が真似できるような次元のものではないから、その磨き術には強く興味を覚えるところでした。
それをほんの一部でも垣間見る、いいチャンスが到来したわけです。
そのピアノの傷とくすみはかなりのもので、長年カバーもないまま上に物が置かれたりの繰り返しで、素人目にもコンパウンド等で磨いてどうこうなるような生やさしいものではありませんでした。
まず慎重に大屋根を外し、作業スペースに広げられたビニールシート上に移動、さらには大屋根じたいも前後バラバラにされ、小さなゴムパーツなども外しますが、これだけでもかなり手間のかかる作業で、この時点からすでに大変さを予感。
ペーパー(紙やすり)を硬いスポンジにあてがい、水や石鹸を含ませながら表面を削っていきますが、技術者さんが言われるには決して円を描いたりせず、決まった方向にだけ直線的に磨くようにとのこと。
これがいきなりの重労働で、墨汁のような黒い汁がそれらじゅうにあふれるし、準備していたビニールの使い捨て手袋など、あっけなく破れてしまってものの役にも立ちません。
さらに、ペーパーは荒いものから目の細いものへと、順次変えながらひたすらこれを続けます。
おしゃべりはできるけど、手は休められないという作業です。
途中休憩以外はこれだけで数時間を費やし、不慣れな私の疲れ具合も考慮されたのか、残りは後日に持ち越されました。
この時点で、表面はニューヨークスタインウェイのヘアライン仕上げのようになり、個人的にはこれが一番いいなあ…と思うほど雰囲気はガラリと変わってしまいました。
─続く─
貴重な体験にご参加できたのですね。 時間もかかって重労働とのことでとにかく大変そうですが、そんな機会があって羨ましくもあります。
ピアノも見事に変身されていますね。
ヘアライン仕上げはなぜだか独特な存在感がありますね、思わずハッとしてしまいそうです…。 周囲の余計な写り込みがないのが存在感を引き立てているのでしょうか…。
決して派手ではなく静かに佇んでいて、まるで白光りしている美しい陶器のようでずっと目で追ってしまいそうです。
大変でしたが、いい勉強になりました。
職人さんのお仕事は、あらためて大変だなぁと身をもってわかり、それだけでもやった甲斐がありました。
おっしゃるように艶出しか艶消しかの違いだけでも、あるで違った表情になりますね。
艶出しがこれだけ一般的になったのは、やはり手入れが楽というのがあるんじゃないかと思います。