顔のない処罰

いまやネットがこの世を支配している勢いですが、思いがけないことに遭遇したので、少し長くなりますが、皆様へのご参考になればという意味も含めて書くことに。

実は、この先使う予定のない家財品などがあり知人に相談したところ、買い取りは価格的に不利なので△△△(有名なフリマサイト)での売却を奨められました。
しかし、△△△はこれまで利用経験もなく躊躇するところもあったのですが、家の中の不要品などなんでも気軽に、しかも「きわめて簡単に」出品できるのだそうで、そちらに疎い私としては、この際よい機会かもと思いアドバイスに従う決断をしました。

まずはアカウントを作りで、銀行口座から運転免許証などの身分証明、さらには顔の撮影などまであるのは驚きました。
運転免許証は表と裏を写真に撮って送るだけでなく、動画でゆっくりと指示通りに免許証の角度を変えながら厚みまで見せなければならないし、顔も動画で正面から左右、笑顔まで撮らせるという念の入れようで、いささか驚きましたがなんとか終了。
自分なりに商品の区別したいという考えがあって、別の端末からもうひとつアカウントを作ることにしたため、また同じ手続きを繰り返し、とくに問題なく終わりました。

さっそく出品してみようとアイテムの写真を撮り、価格を決め、簡単な説明などを書いて、いざ出品しようと最後のボタンをタップしますが、最後の最後で先に進めない。
何度やってもダメで、はじめはわけがわからず、どこか自分の手順が間違っているのかもと思うなど、ずいぶんいろいろ試しましたが、なにをどうやっても出品できません。
翌日になってようやくわかったことは、なんと△△△側から利用制限(使えなくする措置)がかけられていたわけですが、その理由は一切示されず、いきなり真っ暗闇に放り込まれたようでした。

どう対処したらいいのかもわからず、知人にも聞きましたがすぐにはわからないし、電話の受付は一切ないこともこの時知り、なぜ利用制限をかけられたのか、八方塞がりで気分は最悪となりました。
制限をかけるのであれば、せめてその理由を告げるのは当然だろうと私は思うのですが、一切なく、ずいぶん傲慢なやり方で、これではただ個人情報を持って行かれただけじゃないか!と思いました。

そうこうするうちに、「一人につきアカウントはひとつという規定がある」ということがわかり、それでハネられているとしか考えられません。
詳しく見れば、そういう事もどこかに書かれているのかもしれませんが、現実的に細かい同意事項のたぐいを、隅々まで一字一句キッチリ目を通す人がどれだけいるか?と思います。
そういう規定があるのなら、2つ目のアカウントを作る過程で、そういう警告が出るとか、手続きが進めないようになっていればいいものを、そういうことは一切ないまますべてが終了したあとに、いきなりバタンとドアを閉められるのは、まるで囮捜査にでも引っかかったようでした。

これを打開するにはアプリ内から問い合わせするしかなく、そこに行き当たるだけでも一苦労でしたが、ようやく該当するページから事情説明の文章を添えて利用制限解除の申請をしたら、すぐに自動返信らしきものが来て、そこには次のように書かれていました。
申請を受け付けました、一週間経っても解除されない場合はそれで終了となり、その理由には答えない、と。

ずいぶん一方的な言い分に心底おどろきましたが、ともかく待ってみるより手立てがなく、心に不愉快なものを抱えた毎日を過ごすハメに。しかし、一週間を過ぎても10日過ぎても解除になることはありませんでした。
ネットの情報によれば、こうなると制限は無期限とみなされ(つまり重罪?)、ほぼ永久に解除されることはないという扱いだそうで、こちらにしてみれば取引のひとつもやっていないのに、これはいささか度が過ぎやしないかと思いました。

知人もずいぶんと骨を折ってくれて、ついにどこからか探し出してきてくれた打開策は、なんと「詫び状を書く」というものでした。
そこには例文があり、これこれしかじかの事情があったこと、もとより悪意はなく、△△△利用を楽しみにしていた自分は大変悲しい思いをしていること、今後気をつける旨の約束、くわえて謝罪の文言が記され、それでも「必ず解除されるわけではありません」という但し書きがついていました。

本来なら「誰がそんなことするか!」と思うけれど、この頃になると相手はもしやAIではないか?という気もしはじめており、だとするならAI相手に意地を張っても仕方ないと思い、最後の手段としてそれに沿うような詫び状を書いて送りました。
すると、なんたることか、送信から数時間後に「解除」の連絡が来たのです!

このような規約の背景には、悪辣なことをする輩や、違法行為、犯罪に繋がるような事案への対策という意味もあることだろうとは思いますし、それはわかります。
だとしても、もう少し穏当なやり方というのはあるはずで、問答無用で処罰的に切り捨てる前に、最低限の説明とステップを踏むべきだと思います。
それがネットだ!今どきだ!というのなら、今どきは、相手に少しでもストレスを与える行為を☓☓ハラスメントなどと名前をつけて厳しく糾弾される時代となっているのだから、△△△のこの強権的なやり方は何かのハラスメントではないのか?と思いました。

なんとか解除にはなったものの、受けたストレスというか心の疲労はかなりのものに積み上がり、現在はまだ出品する気力がわかないでいます。

顔のない処罰」への4件のフィードバック

  1. 不快な思いをされましたね。お気持ち察します。
    企業が人の代わりにAIを据え置くことで、臨機応変の対応がなくもどかしさを感じる場面が増えてきましたね。

    カスタマーサービスへの電話では、自動音声でいくつも質問が続き人間の担当者にたどり着くのに時間がかかるのもうんざりすることがあります。(相手の予測する回答でないと一方的に切られて、また1からかけ直したり…)

    AI の過渡期なのでしょうが、従来のきめ細かいサービスに対応できるようになるまで客は我慢せざるを得ないということですかね…。

    • たかだかフリマで、生活上の深刻なことではないにもかからわず、ネット上のこういう出来事は、自分でも不思議なくらい不快になるというのを実感しました。

      仮に電話があっても仰るとおりで、人の声を聞く前段階の手間暇や待ち時間でヘトヘトです。
      便利な世の中にはなりましたが、失ったものも小さくはないように思います。

      こういうことを繰り返していると、いつかは人間の脳や体つきも変化して、最後は絵にある宇宙人みたいになるのかも。

  2. 「顔のない処罰」というタイトルが全てを物語っている出来事でしたね…。
    タイトルが秀逸で思わず唸ってしまいました!
    いくら復活したとはいえども、出品する気が失せるのはご尤もでしょう。

    AIは人間以上の能力があると言われていますが、感情等に関しての能力はズレが生じておかしな事になりそうですし、海外ではChat GPTとの会話後に自殺に追いやられた人も居ましたね…。
    今の若い方やこれから生まれて来る未来ある方々が、これが当たり前だと思われる事のないよう祈るばかりです。

    • 「Chat GPTとの会話後に自殺」ですか!
      それは最悪のケースだと思いますが、でも、今回のことで、その気持のごく一端はわかるような気がします。
      ネット上のトラブルというのは、想像をはるかに超える強い打撃を受けてしまうのはどうしてか?と思います。

      今回のことは、理由もわからない、質問もできない、成り行きも読めない、弁解もなにも伝える余地もないまま、きわめて一方的な処罰が下される。
      まるでどこぞの国で突然訳もわからないまま拘束されるようで、精神的には完全な暴力だと思います。

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