福岡市の銀杏並木

今の季節、車で市内を走っていると、福岡は銀杏並木が縦横に張り巡らされていることがよくわかります。
とくに博多駅周辺の幹線道路はどの通りに出ても見事な銀杏並木が今まさに絶頂の黄色に染まって、見る者に冬の到来を華やかに告げています。

詳しいことは覚えていませんが、3〜4代前の市長さんは、長期政権なだけでこれといった突出した政治力はありませんでしたが、彼が福岡市に残した業績のひとつが、街中に緑をひたすら植え続けたことだと言われていたのを思い出します。
別名「緑の市長」などといわれたように、福岡市内の幹線道路などに相当量の街路樹が植え続けたことは小さな話題ではあったものの、当時は市長としての手腕に欠けるということのほうが問題にされ、木を植えたからといって別にどうということもありませんでした。

しかし、それから30年ちかく経ってみると、はじめはか細かったあちこちの街路樹も、すでに立派な大人の木に成長しており、それが街の美しい景観を際立たせるのに大いに役立っていることが明らかなようです。

とくに銀杏の木は、成長がいいのか既に堂々たる大木となり、それが一斉にいま美しい黄色に変わって、街は季節の色に鮮やかに包まれている感があります。それらの銀杏は一定間隔でどこまでも並んでおり、街のあちこちに華やかな彩りを添えてくれています。
歩道には扇形のかわいらしい無数の黄色の落ち葉がメルヘン画のように降り積もり、見ているだけでもなんとなく楽しげな気分になるものですね。
場所によっては路上がハッとするような黄色に埋め尽くされ、紙吹雪のように分厚く積もっていたりすると、ふと掃いてしまうのがもったいないような気になるものです。

ふつうは銀杏並木などと言えば、一本の通りだけだったりするものですが、博多駅周辺ともなると幹線道路であれば、どこをどう曲がっても、そこにまた延々と銀杏並木が続いているところに驚かされます。
たかが木を植えただけとはいっても、これだけの距離と夥しい数になると、これはこれで大変な偉業であり功績だったのだなあと、今にして感慨深く思うものです。

思えばケヤキ通りのケヤキもずいぶん立派な木になっていますし、大きな街路樹のある街というのは、それだけで街の歴史と格式を表す指標となるものですが、それは一朝一夕につくることのできるものではないからでしょう。
歴史ある都市と、新興の都市の違いは、街路樹の大きさひとつ見てもわかるというわけです。

例えば東京なども、マロニエ君はイメージよりははるかに緑の多い街という認識があるのですが、それは皇居をはじめとする、東京ならではの緑を擁する大型の建造物や公園などが点在するのはもちろんのこと、立派な街路樹が際限なく植えられている点が、さすがだと思うところです。

銀杏並木といえば全国的にも有名な神宮外苑の絵画館前はたしかに立派ですが、実はあれ、銀杏の種類が違っていて、葉がとても大ぶりできれいではなく、いささか風情に欠けるところがあります。
その点でも福岡市の銀杏は、みんなが良く知るかわいいあの銀杏ですから、よけいに愛らしく繊細に見えるのかもしれません。
山の景色を臨まなくても、すっかり季節の気配を満喫した気分ですが、あと一週間ほどが見所でしょうか…。

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