有名な長寿番組である「徹子の部屋」にユンディ・リが出るというので、昼間は見られませんから録画していました。
いきなりで恐縮ですが、ひさびさに見た黒柳徹子さんでしたが(外観は例のヘアースタイルと厚化粧ですからわからなかったものの)、知らぬ間にすっかりお年を召したとみえて、彼女の何よりの武器だった、立て板に水のあのスーパートークが、すっかり衰えているのにはちょっとしたショックを覚えました。
人間、歳を取れば体の機能が低下するのは致し方ないとは思いますが、それでもプロが公の場で仕事をする以上は保証すべき一定水準というのはあるはずで、モタついて滑舌の悪い黒柳徹子というのは、なんとも収まりが悪く、かつてはあの機関銃のような一気呵成なトークが売り物だっただけに、見ているこちらが痛々しい気分になってしまいました。
せっかくの記録的な長寿番組ですが、しかしあれではもう引退も遠くはないでしょうね。
いっぽう感心したのはユンディ・リで、マロニエ君は正直言って彼のピアノはあまり好みではないのですが、それはちょっと置いておくとして、非常におだやかで、態度も紳士的。とてもあの大国の御方とは思えぬ上品で控えめな態度は意外で、むしろ地味すぎてオーラがないぐらいな印象でした。
もうひとりの同国の世界的ピアニスト、ラン・ランがなにかにつけ派手で、控えめというのとは真逆のキャラでバンバン売っているのとはあまりに好対照であるのが面白いぐらいで、少なくとも日本人はラン・ランの陽気にはじけたエンターテイナー的な雰囲気より、ユンディ・リのどこか日本人的とも言えるような静かで落ち着いた雰囲気を好むだろうと思います。
マロニエ君はすぐに、相撲に於けるモンゴル出身の両横綱であった朝青龍と白鵬の、あまりにも対照的な個性の違いを思い出したほどです。
番組内では、一曲だけ演奏をするということで、有名なショパンのノクターンのOp.9-2が披露されましたが、スタジオに持ち込まれたピアノが???でした。
これは東京にある主にピアノ貸出を専門にやっている業者所有のハンブルクスタインウェイのDで、この番組のために持ち込まれたものでしょう。ピアノのサイドにはその会社名が書かれていましたが、ここは以前は主にニューヨークスタインウェイの貸出をメインにやっていたからかどうか、そのあたりの詳しいことはわかりませんが、少なくともマロニエ君にはまったくその良さが理解できないピアノでした。
ピアノ自体は見たところ20年前後経ったピアノで、本来なら脂がのって味が出て、とてもいい時期のピアノのはずだと思うのですが、全体に響きも沈みがちで、この点は非常に不可解でした。
もちろんテレビ局のスタジオという場所での演奏ですから、必ずしも好条件とは言えませんが、中音から高音にかけてやたらキンキンするばかりの深みのない音など、とてもこのピアノが本来持っているものとは思えず、調整や音の作り手の感性なのだろうと思いました。
マロニエ君は以前からこの会社のピアノの音はあまり好きではないのですが、よくテレビだのコンサートだのと、立派なピアノのある会場にも、敢えて自社のピアノを持ち込んでいる会社ですから、よほど営業力があるのか、なにか別の事情があるのかはよくわかりませんが…。