生ピアノ=グランドピアノ?

昨日、我が家に来宅した知人は、おもしろいことを言い残して帰りました。
その人もこのホームページを見てくれているそうで、なんともありがたいことなのですが、曰く、ピアノのことで「マロニエ君が書いている通り…」といわれたので、いきなり何のことかと思ったら、No.62の「ピアノビジネスの変化」の中で述べている今の中古ピアノの市場でのニーズと実情に関することで、アップライトは飽和状態、さらには極端なグランドのタマ不足ということに繋がる話でした。

その人はもちろん業者ではなく、純粋な趣味で大人になってからピアノをはじめた人なのですが、目下電子ピアノで熱心な練習をやっているものの、いずれ現在のマンションを出て、生ピアノ(これ、変な言葉ですね)購入を目論んでいるようです。その際「アップライトには興味が持てない」「まったく眼中にない」とはっきり言い切ったのには、さすがのマロニエ君も驚かされてしまいました。

その人によると、電子ピアノで練習している人の心理としては、せっかく生ピアノを買うというのにアップライトでは、イメージ的に期待するほどの差(寸法や姿形など)がないのだそうで、したがって気分も盛り上がらないらしいのです。
それだったら安くて手軽で便利な電子ピアノでガマンするということになるのだそうです。
その人の中では「生ピアノ=グランドピアノ」という図式が出来上がっているらしく、いずれは…と思い定めて目標にする対象としてはアップライトは性能のことはともかく、まずイメージとしても魅力に乏しいようで、やはり何をおいてもグランドピアノの堂々としたオーラのある姿と存在感は人の心を惹きつけて止まないようです。

まさにこれ、現在の中古ピアノ店の在庫状況にも符合する話で、購入者のニーズが電子ピアノかグランドかという両極に別れてしまい、どうもアップライトは宙に浮いてあまり人気がないようです。
まさに『帯に短し襷に長し』といったところでしょうか。

その人が先日、関東に出向いたついでに、ある大手楽器店のピアノセンターのようなところに立ち寄ったところ、そこには世界の名器名品がズラリと並んでいたそうです。
多くが中古ピアノのようですが、店長とおぼしき人に「これらは以前はどんな人が使っていたピアノなんですか?」と質問したところ、「それは前オーナーの方へ差し障りがあるので申し上げられませんが、取り扱っているのはすべてワンオーナーです!」とキッパリ言い切ったとか。
それを聞くなり、マロニエ君はそれはあまりにも見え透いたウソで、しかも必要のないウソだと思いました。

そもそもワンオーナーなんてまるで中古車屋みたいな言葉を使うようですが、マロニエ君はその会社が海外から中古ピアノを仕入れて販売しているのは知っていましたし、オーバーホールされた数十年前のピアノ、なかには7〜80年も昔のヴィンテージピアノも何台も混ざっていますが、自分の歳よりも遙かに上の、しかも長年海外にあったピアノを「すべてワンオーナー!」などと言い切るとは、なにを根拠に…と思いますし、いったい何のためにそんなことを言うのかと思います。

中古ピアノは個々の楽器の状態やリビルド品の場合はその作業の質や仕上がりの優劣、音色や、タッチや、響きが問題なのであって、それらが申し分なければ別に複数のオーナーの手を経てきた物であっても一向に構わないわけですし、仮にワンオーナーであっても物がよくなければ、そんな経歴などなんの助けにもなりません。
でもきっと、店長などという人物にそうキッパリ言われると、なるほどと納得してしまうお客さんもいるのかもしれませんし、だからこういう発言も効果があるということなのかもしれません。

まあ、どのみちビジネスはきれい事じゃありませんが、でも、ウソはよくないですね。
人の気持ちというのは、ひとつウソをつかれると何もかもがウソのような憶測が走り、結局そんな店は避けてしまうようになりますから。

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