リスト弾き

考えてみればリストという作曲家ほど、わかりやすいようでわかりにくい、明解なようで難解な、最も通俗的なようでそうでもないところもある作曲家も珍しい気がします。

そんなリストですから生誕200年と言っても、やはりショパンのようなわけにはいかないのは明らかでしょう。

前回往年のリスト弾きの名前を挙げましたが、現在はだれもがあまりにもオールマイティなピアニストを目指すので、特定の時代や作曲家だけを得意とする○○弾きという人はほとんどいなくなったようですね。
リストと同じハンガリー出身のジョルジュ・シフラは超絶技巧をウリにするリスト弾きでしたし、リストの作品を広く世界に広めるには大きな貢献をした人です。でもこの人は超絶技巧をウリにしながらもとても純粋な心をもった人でもあったようで、ショパンなどにもそれなりの名演を残しています。
たしか晩年はまだ初期の頃のヤマハCFを愛奏していました。

リストと言えば強烈だったのは、ラザール・ベルマンの超絶技巧練習曲です。
リヒテルやギレリスでロシアピアノ界の圧倒的な凄さを見せつけられていたところへ、またぞろこんな怪物がいるのかと思わせたのが、人間業とは思えないベルマンのこのレコードでした。
こんな恐ろしいまでの腕を持ちながら、ほうぼうのレコード会社に自分を売り込むなど、大変な苦労をしたというのですから、当時のソ連の社会というのは想像を絶するきびしいものだったことがわかります。
西側へデビューしてからは来日もしましたが、思ったほどの盛り上がりはなかったように思います。

フランス・クリダはずいぶん前には頻繁に来日し、やたらめったらリストを弾いていたような記憶がありますが、その後はなぜかステージからはパッタリと姿を消してしまったようです。
クリダのCDは一枚も持っていないので、ずいぶん前に買ってみようと思った時期があったのですが、どこをどう探しても見つかりませんでした。それが今年、リストの主要な作品全集ということで14枚組で発売されることになりましたので、これはぜひとも購入してみるつもりです。
たしかに、こういう普通なら絶対になかったであろう企画物が出てくるところは生誕・没後の年の面白味だろうと思います。

その最たるものは、レスリー・ハワードの演奏によるリストのピアノ作品全集で、これまで分売されていたものが、ついに99枚組!という恐ろしい数のセットとなって発売されることになったようです。
ハワードはこのリストの大全集を作ることをライフワークとしていたそうですが、まさに大願成就というところでしょうし、マロニエ君は全集というものを必ずしも双手をあげて賛成しているわけではないのですが、さすがにここまでくればまさに一大事業で、いやはや大したものだと思います。

これを購入するか否かは大いに悩む点です。
資料的な価値は唯一無二のものがあると思われますが、そもそもそれほど好きでもないリストですから、安くもないこんな強烈な全集を買っても聴き通す自信もないですし。
でも妙に気になる全集であることはたしかなので、もう少し検討してみようと思います。
こういうものは買うべき時に買っておかないと、絶版になったりするのもわかっていますから。

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