ミネラルウォーター

人の心理というものは如何ともしがたいもので、いくら理屈や建前ではわかっていても、我欲や不安感というものはそうたやすく理性で押さえ込むことはできないもののようです。

福島第一原発の事故いらい、放射能汚染の問題が連日かまびすしく報道されていますが、微量の数値が確認されたからといって、ほうれん草や牛乳などの生産者は、もともとこんな震災に遭った上に、さらに目も当てられないような打撃を加えられているようですね。

さらに今度は海水やダムの水にもわずかな放射能が確認されたということですが、人体に影響のない程度のごく少量のものである由。
したがって乳幼児のミルクなどにのみ、これを使用しないように通達があったと思いきや、予想通りと言うべきか、今度はスーパーなどからミネラルウォーターが一斉に姿を消す事態となっています。

政府がいくら乳幼児以外は大丈夫と言ってみたところで、こうなるとなかなかブレーキがかかるものではないのでしょう。

健全な社会において、情報の開示は確かに必要なことで、これが失われれば独裁国家と同じですから、何事によらず包み隠さず報道されるという基本は当然のことであるし、そのスタンスは正しいとは思いつつ、やはり、発表の仕方、報道のありかたにもどこかおかしなところがあるのではないかとも少し思っていまいます。

とくに日本人は汚染、伝染といった目に見えない事に対して示す反応というか、抱く不安感は際立って強い民族だと思いますが、あまりそんなことを言っていたら、被災地の人達のおかれている劣悪な現状(まことにお気の毒の極み)とか、消火に携わった東京消防庁のスーパーレスキューの勇士達の抱えているであろう不安などはどうなるのか…と思ってしまいます。

彼らの被った危険や、ましてやこの震災で落命した多くの人達のことを思ったら、そうそう些細なことで自分ばかりが安全を漁りまわるのも、いささか異常で見苦しい気がします。
ニュース映像の中には、不安だからという理由で、貴重なミネラルウォーターをドバドバ使ってお米を洗っている人などもいて、見ていてさすがにいい気持ちはしませんでした。

もうこうなると中がどんな水であっても、とりあえずペットボトルに入って店で売られている物ならそれで満足というか安心なんでしょうね。
問題の数値は次第に下がっているらしく、しかも基準は直接水を飲んだ場合を前提としたもののようですから、そんなに神経質になる必要はないと思うのですが、いったん煽られた不安とエゴが結びつくと、それこそ歯止めが効かない暴走状態になるのかもしれません。

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