ダンプチェイサー

この数日はようやく晴れ間が出たものの、先週の雨による湿度の増加は、心身共にぐったりくるものでした。
マロニエ君は自分自身が湿度に強くないので、除湿することは自分自身とピアノを2つながら守ることになるわけですが、さすがに数日間続くべっとりとした雨模様ともなると除湿器の能力にも限界が見えてきます。

もちろん24時間フル稼働で、終日休むことなく回していますが、それでも最終的には60%をなんとか切るぐらいまで迫ってきたのにはイヤになりました。

さすがにピアノも弾いてみると、どこなくぼんやりしているようで、なんとかできないものかと思っています。
そんな折、熱心な調律師のホームページなどを見ていると、複数の技術者がダンプチェイサーというピアノ専用の除湿器具の取り付けを強く推奨していました。

ダンプチェイサー自体は決して新しいものではなく、以前からその名前と存在だけは知っていましたが、なんとなくピンと来なくてそれ以上調べてみようという気持ちになれませんでした。
しかし、ある本の著者などはしきりにこれを「優れもの」と認識して読者に勧めていたりするので、機会があれば見てみたいぐらいに思いつつ、なかなかそんな機会があるはずもなく、以降そのままになっていたものでした。

このダンプチェイサーというのは、棒状のヒーターをピアノの内部に取り付けて、センサーの働きにより湿度が一定以上になると自然にスイッチが入り、湿度が下がれば自動的に停止するというもの。
装置自体も安くてだいたい1万円強から2万円といったところですし、平均的な電気代も200円程度/月というものですから、そこはたいへんリーズナブルだと言えそうです。

ところがピアノへの装着例が示されているのがどれもアップライトピアノばかりで、アップライトの場合は鍵盤下部の蓋を開けた内部にこのダンプチェイサーを左右の側板に長さを合わせ、つっかえ棒のようにして装着するわけですが、あとは蓋をするので区切られた空間となり、なんとなく効果がありそうに思えましたが、グランドの場合は水平の響板下に支柱があり、そのさらに下に取り付けるというもので、これでは機械自体が外部にむき出しとなり、果たしてそれで効果が期待できるものかという疑念が残ります。

もっとも気にかかったのは、要するにヒーターの周辺の空気を熱で温めて対流させて除湿するということは、この機材に近い部分の木材に悪影響はないのだろうかという不安を感じた点です。

そこで親しい技術者にこのダンプチェイサーについて聞いてみると、なんと効果絶大だそうで、付けると付けないとでは大違いという、思いがけなくどっしりとした答えが返ってきました。たとえばある施設の広い場所に置かれている除湿器の使えない環境のピアノは、激しい調律の狂いが多くの人から指摘されていたらしいのですが、これを装着することでピタリと安定してしまったとか。

すでに相当数を取り付けている実績もある由ですが、なんのトラブルもなく、ピアノの保護という観点においてこれは一大発明だと思うと自信をもって言われてしまいました。ただし、木材への悪影響についてはないつもりだけれども、それを数十年単位で判断するとなると、さすがにそこまではわからないというものでした。

唯一の問題点としては、国産とアメリカ製の二種があり、湿度設定が国産では65%、アメリカ製では45%に固定されていて任意の設定が出来ないということだそうです。
というわけで、梅雨を目前にして、さてこれを付けてみるべきか、大いに悩むこのごろです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です