さすがは大国

昔ほどではないにせよ、さすがにアメリカは大国だなあと感嘆させられることはいろいろあるもので、ピアノを取り巻く環境もちろんその一つです。
そして、それを証明するかのように「PIANO BUYER」というピアノ専門の雑誌まであるのです。

日本でピアノ関連の雑誌といえば、ショパンやムジカノーヴァのような演奏家やコンサート、あるいはレッスン関連のものしかありませんが、この「PIANO BUYER」は楽器としてのピアノ雑誌で、いってみれば車の雑誌みたいなものです。

これ、以前からその存在は知っていたので見てみたいとは思いつつ、たかだか雑誌一冊を海外から個人輸入するのもどうかと思い、手を出せないでいたのですが、このところアマゾンでいくつか本を買ったのを機に、もしかしたらアマゾンで取り扱っていないものかと思って検索してみると、なんのことはない、この「PIANO BUYER」があっけなく出てきたので、さっそく購入してみました。

価格はほぼアメリカの定価ぐらいで、一週間ほどで届きました。

サイズは音楽の友あたりと同じで、300頁に迫るカラーの美しい雑誌は手にもズッシリくる立派なもので、なかなか見応えがあります。
SPRING 2011とあるので、どうやら季刊誌のようですが、こんなものが雑誌として成り立っていくということ自体、アメリカの豊かな社会の層の厚さを感じさせられる思いです。

とくに前半は美しい広告など写真も多く、それなりに楽しめるものでした。

また、おおよそはネットなどでわかっていたことですが、アメリカには実にたくさんのピアノ店があり、そのショップ関係の広告もたくさん出ています。
もちろん新品を中心に扱っているところもありますが、どうしても心惹かれるのはレストアから販売まで幅広く手がけている店です。その数もかなり多く、さらに驚くべきは、ホームページを見てみるとどの店も在庫数などが日本のピアノ店とは桁違いで、潜在的な市場規模がまるで違うことをまざまざと見せつけられるようです。
さらに日本と大きく異なるのが、グランドが圧倒的に主流という点でしょうか。

これはひとえにアメリカという消費社会の伝統と、これまたまるきりサイズの違うおおらかな住宅事情がその背景にあるものと思われます。
日本では自宅にグランドピアノを置くということは、部屋をひとつピアノで専有するぐらいの覚悟が要るものですが、アメリカの住宅では、広いリビングのようなところに、ピアノは適当にポンとおかれており、それでも四方に広大な空間が広がっているようで、何型なら入るの入らないのと必死になっているわれわれ日本人の標準が急に情けなくなってくるようです。

しかし、本来はこれぐらいのスペースであることがピアノを置く自然な環境なのだろうか…とも思わせられます。
同時に、なにかにつけ日本人のチマチマとした民族性のルーツは、もとを辿れば要するに窮屈極まる制約ずくめの住宅事情にあるのではないかとさえ思えてくるようです。

話が逸れましたが、「PIANO BUYER」を見るとアメリカにはヨーロッパからも実に様々なピアノが輸入されていることがわかり、その多様性にも目を見張らされるものがあります。
これを反映して、後半の1/3は各社のピアノの価格表になっており、それを見ているだけでも飽きませんが、どうやらディアパソンやプレイエルなどは正規のルートとしてはアメリカには輸入されていないようです。

今は日本の産業界にとって最大の悩みの種であるほどの円高ですから、航空券は安いし、アメリカに行って気に入ったピアノを買ってくる手間暇を惜しまない人なら、価値あるヴィンテージピアノなどが割安な価格で買えそうです。
ああ…死ぬまでに一度そんなことをやってみたいものです。

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