先月はルービンシュタイン・コンクールがイスラエルで行われて、すでに終了したようです。
優勝はロシアのダニール・トリフォノフ(昨年のショパンコンクールでは第3位)。
この人の演奏は、日本公演の様子などからマロニエ君はどうにも馴染めず、とくに演奏姿勢が背中を猫のように丸めたなんとも異様な感じで抵抗感を覚えましたが、ネットのある書き込みでは彼のことをヘンタイ、ヘンタイと連呼しているのが笑えました。
やはりみんな似たようなことを感じているもんだと思えて、とりあえず安心しました。
ピアニストにとって演奏する姿というのも、それなりに大事な要素だと思います。
一昨年のクライバーンコンクール、昨年のショパンコンクールでも話題となったボジャノフなども、その演奏の良否はさておいても、演奏時のあまりに特徴的なペルソナというか、要するに見た感じの誇大な顔の表情とか仕草があまりに強烈で、やはり人に与えるマイナスイメージは小さくはないと思われます。
もちろんピアニストの本分は優れた演奏ですから、別に外見をカッコつける必要はありませんが、やはりその姿が美しい方が好ましいし、最低でもその演奏に対するマイナス要因になるような弾き方は、できるだけないほうがいいと思います。
その点でいうと、マロニエ君はブレンデルなどもその音楽には一定の敬意を払いつつ、演奏する姿を見るのは大嫌いでした。
あれだけの長身にもかかわらず小柄な女性のように椅子を目一杯上げて、小刻みに頭をフリながらピアノを弾く姿はどうにも不快で、とくに床から頭までの尋常ではない長さと高さなどは視覚的ストレスを覚えてしまいます。
その点でグールドなどは正反対で、椅子の足をのこぎりで切るほど着座位置が低く、彼は終生自分専用の変テコな椅子を愛用しているのは有名でしたが、そのグールドの演奏の様子はとても変わってはいるけれども、どこにも神経に障るものは皆無でした。それどころか、ただただあの信じがたいような芸術的演奏の様子として感銘を受けるばかりで、そこには独特の美しさが宿っていたとマロニエ君は思います。
昔の飛行機のパイロット仲間で言われていたことだそうですが、見た目に美しい飛行機というのはだいたい操縦もしやすく、バランスも性能もいいのだそうで、やはりピアニストもどのような姿のものであれ、それが結局美しくサマになっている人は演奏も素晴らしいのだろうと思います。
そういえば、最近のピアニストはだれもみな指運動の平均点は高いようですが、その「美しさ」のある人というのがあまりいなくて、なにかしらのストレスを感じさせる人が多い(と感じる)のは大変残念なことです。
優勝したトリフォノフは昨年のショパンコンクールではファツィオリを弾いた数少ないピアニストの一人でしたが、今回のルービンシュタインコンクールで使われたピアノはスタインウェイとカワイの2社だったようで、彼は今回スタインウェイを弾いていました。
日本人の最高位は6位の福間洸太郎氏で、彼はカワイを弾いての入賞だったようです。
このコンクールでのカワイはSK-EXではなく、普通のEXであったことが意外ですが、その理由などはわかりません。
しかし、マロニエ君は自分の知る限りにおいては、普通のEXのほうに今のところは好感を持っています。
客席側に見えるサイドの「KAWAI」ロゴは、以前の大仰な飾り文字から通常の書体になっていますが、これはこれであまり色気がありませんでした。
6月はいよいよチャイコフスキーコンクールとなりますから、コンテスタントも忙しいですね。