車とメガネ

車を12ヶ月点検に出したので、一晩代車に乗ることになりました。
代車で届けられたのはスズキのスプラッシュというコンパクトカーで、これはたしかハンガリーかどこかで生産されている車ですが、基本的にはよくできているものの、マロニエ君はあまり好きではありませんでした。

マロニエ君は実はオートバイ出身で、昔はかなりスポーツカーにも乗ったせいか、タコメーターがないというのはどうにも落ち着かないというか、それだけで車そのものまで信用できなくなります。

その点は割り切るとしても、いちばん辛いのは、スピードが出ると車全体がドラミングという風切り音の大親分みたいな音に包まれて、それが脳天に達するもので、まずこれですっかり疲れてしまいました。

このドラミングというのは経験的にワゴンやハッチバックタイプのボディ形状の車にしばしばあることで、かのメルセデス・ベンツでさえ、ワゴンタイプにこの現象がはっきり感じられる場合があります。
また、一般的なセダンでも後ろの窓だけを開けて走ったりすると、車内への風の巻き込み具合でやはりドラミングが起こり、バタバタとまさに怒濤のような音と圧迫感が脳天に押し寄せます。

窓を開けたときに出るドラミングならば窓を閉めれば済むことですが、ボディの構造自体から出てくる場合は解決のしようがないので、新しく車を買う場合などはこの点をよほどチェックしておかないと、これが嫌な人は乗るたびに不快感に襲われて、せっかく高いお金を出して買った車が台無しになるでしょう。

もうひとつ疲れた原因は、点検に出した車の中にうっかり運転時に使うメガネを入れっぱなしにしていたのですが、夜はメガネなしでは危なくて運転できないので、やむを得ず古いほうのメガネを使ったのはいいのですが、これが要するに、もう自分には合わなくなっていたようでした。

実はスーパーに買い物に行ったのですが、運転中はそうでもなかったのに、車を降りて店内を歩いていると「あれっ??」という感じで頭がフラフラしはじめて、直感的にメガネのせいだとわかったのですが、まあそのうち治るだろうぐらいに軽く考えていました。
ところが一向に治る気配はなく、店を出るころには普通に歩くのさえ辛いほど気分が悪くなりました。
少しでも頭を動かすと目を中心として体がグラグラするようで、これはまずいと思いましたが出先ではどうすることもできません。

もう一ヶ所、どうしても寄らなくちゃいけないところがあって、メガネなしで運転しようかと試みましたが、やはり夜はそうもいきません。だいいち借り物の車で事故でも起こそうものなら大変ですから、やはりメガネをかけて慎重に走りました。

ようやく自宅に辿り着いたときには全身がぐったりと疲れてしまい、ひじょうに気分が悪かったのですが、ともかく無事に帰ってきたことを良しとしました。
古いメガネはスペアーぐらいのつもりで、二つ持っている認識でしたが、もはやこれは使えないということが身をもってわかったという次第でしたし、車もはやく自分の使い慣れた車が戻ってきてくるのが待ち遠しくなりました。

ほんのわずかなことが人に与える影響というのは想像以上に大きいもので、平穏というものは実に微妙なバランスの上に立っているということをしみじみ経験してしまったというわけです。
もちろん、世の中にはそんなこと全然なんともないタフな人もいらっしゃるでしょうけれども。

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