カワイ軍団

ピアノクラブ内では、俄には信じられないような事実があります。

クラブ員は皆ピアノを弾くわけですから、当然ながら電子ピアノ、アップライトピアノ、グランドピアノまで、様々な楽器を使っている人がいらっしゃいますが、その中で、グランドピアノだけに限ると、信じがたい事実が浮かび上がり、これは果たして偶然か必然か…。

全員をくまなく確認したわけではありませんが、マロニエ君が現在把握しているだけでも、カワイが5台、シゲルカワイ2台、カワイが製造しているディアパソンが2台に対して、ヤマハはわずか2台!で、圧倒的にカワイ系の健闘が目立ちます。

これは一般的なヤマハ優勢の流れからいうと、真逆の情勢で、なにが理由だろうかと思いますが、はっきりしたことはわかりません。一般的な人がごく自然に選ぶピアノがヤマハだとするなら、われわれはひどく不自然な一般人からかけ離れた人間の集まりということになるかもしれません(笑)。

普通はどこに行っても置いてあるピアノは十中八九ヤマハですから、ピアノクラブの定例会でもこれまで利用した会場のピアノはことごとくヤマハで、カワイだった場所はたった一箇所しかありませんでした。
その一箇所というのも、地元のオーケストラの弦楽器奏者の方が作られた貸しスタジオなので、やはりなにかのこだわりがあって意図的にカワイを導入されたものだろうと思われます。

日本はピアノといえばまずはヤマハで、どこに行っても判で押したようにヤマハ、ヤマハ、ですから、ピアノクラブの個人所有のグランドピアノが、これほどの猛烈な比率でカワイ系のピアノだというのは本当に驚いてしまいました。

別に我々はカワイ楽器の回し者でもなければ、なにかそれに類する系列に属しているわけでもなんでもない、単なる個人の集まりであるし、お互いに話し合って買ったわけではなければ買った時期もバラバラで、知り合ったときには皆ピアノは持っていたことを考えると、この事実は実にまったく注目すべきものがあるようです。
もう一度繰り返しますが、ディアパソンを含むカワイ系が9台に対して、ヤマハが2台というのはやはり尋常なことではないようで、もしマロニエ君が学者なら即席の研究テーマにしたいところです。

彼らに共通しているのは、カワイ(およびその系列)のグランドには、皆一応の満足をしている様子で、最大手のピアノにはほとんど関心がないように見受けられる点でしょうか。

これに対して、一般的な施設の備品として置かれているピアノや、ピアノの先生には圧倒的にヤマハが多いようです。
もちろんカワイ系列の音楽教室に連なる先生達はカワイかもしれませんが、いわゆるフリーの先生やピアニスト、音大生などはマロニエ君の知る限りでは圧倒的にヤマハです。

カワイを選んだ人の動機を一人ひとり聞いてみたわけではないし、それもまたいろいろだろうとは思われますが、単純に音の好みということは、やはりあるのではないかと思われます。
ただ現実には、ピアノを買う人というのは、とにかく何を買ったらいいのかわからなくて、ヤマハとカワイの違いもわからないという人が多いのも事実で、わからないからヤマハを買っておけば間違いないだろうというのが一般的です。
そんな中で、少なくとも自分の好みがあり、それをカワイのほうに感じたというのであれば、これはもう立派なひとつの見識で、ここは最も注目すべき部分だろうと思います。

マロニエ君は決してヤマハを否定するものではありませんし、ヤマハの良さも自分なりにわかっているつもりです。
同時にカワイがすべて良いなどと思っているわけでもありませんし、カワイの欠点もむろん知っています。

ただ、それでも、もし新たにヤマハかカワイのいずれかを買うとしたら、機種はさておいても、マロニエ君なら迷うことなくカワイを選ぶことだけは間違いありません。

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