ネットオークション?

報道などですでにご存じの方もいらっしゃると思いますが、日本音楽財団所有のストラディヴァリウスの1挺が、東日本大震災の復興のために売りに出され、これがなんと過去最高額で落札されたようです。

日本音楽財団は文化庁文化部の芸術文化課が管轄する公益法人で、十数挺のストラディバリウス等を保有しており、これらの楽器を芸術家や音楽家など、それを演奏するに値すると判断された人に、無料で貸し出しているそうです。
むろん非営利団体であり、1974年の開設いらい楽器を売却したのは今回が初めてということです。

ストラディヴァリウスにはそれぞれの楽器に、過去の所有者やエピソードなどから取った様々な名前が付けられており、今回売り出されたのは「レディ・ブラント」という世界的にも極めて有名な楽器です。
この名は、英国の詩人バイロン卿の孫であるレディ・アン・ブラントがこれを30年間所有したことに由来していますが、この楽器を有名にした最も大きな特徴は、ほとんど使われていない極めて保存状態の良いストラドだということです。
1721年製とありますから、ストラディヴァリ77歳頃の作ということになり、彼は不思議な人で人生の後半から晩年になるほど多作になるのです。

ほかに未使用に近いストラドとしては「メシア」という名で呼ばれる楽器が有名ですが、約600挺といわれる現存するストラディヴァリウスの中でも、これほど使い込まれていない楽器は片手で数えるほどあるかないかでしょう。

そんな貴重品の中の貴重品である「レディ・ブラント」を売りに出したというのは、どんな経緯があったのかは知る由もありませんが、おそらくは大変な決断だったと思います。
もしかすると、文化の名の下に高い楽器ばかり買い集める同財団へ、なんらかの批判や圧力などがあったのかもしれず、そういう力に押されてのことだったのでは?と思うのは考えすぎでしょうか。

ネットの情報によると、日本音楽財団がこの「レディ・ブラント」を購入したのが2008年のことだったそうですから、わずか3年ほどの日本滞在だったということになるのでしょうか。

ともかくこれが、ロンドンの楽器の競売会社タリシオが主催するネットオークションに出品され、匿名の入札者によって、なんと980万ポンド(約12億7千万円)で落札されたというのですから、驚くばかりですし、いかにこれがストラディヴァリのヴァイオリンの中でも格別の一台とはいえ、この凄まじい価格は狂乱的な気がします。

しかもこれ、ネットオークションというのがさらなる驚きで、ヤフオクのようにこの落札者はモニターを見ながら、自分の指先でカチャッとクリックして入札したのでしょうか!?
ちなみにこれ以前の最高額は約4億ということですから、「レディ・ブラント」は一気にその三倍以上の値を付けたことになります。

ここまで来ると、もはやその額に相当する価値があるのか否かなど、考えることさえナンセンスでしょう。

ちなみに、日本音楽財団の所有楽器の資産額合計は、約95億円なのだそうで、およよーんですね。
ずば抜けたヴァイオリンの才能があって、めでたくこういう機関や団体から楽器を貸与される幸運に恵まれても、これでは保管や移動など、ほとんど気の休まるときがないでしょう。
心配でうかうかトイレにも行けない気がします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です