ネット販売

アマゾンで書籍の検索していたら、たまたまある本が関連商品として表示されてきました。

なんでも、インターネットでピアノを販売している人が成功して、そのノウハウを紹介する本が出版されているようでした。
最近は本によっては中が数ページのみ覗き見ることができるようになっており、どんなものかクリックしてみると、前書きから目次にいたる数ページには、「信用」「人間力」「人間の善の部分」「社会貢献」というような言葉がうねうねと躍っていました。とくに「人間力」は何度も繰り返し現れます。

マロニエ君はどんな職業であれ、こういう人生訓めいた言葉をやたら使いたがる、熱血漢ぶった経営者というのがどうもあまり馴染めません。
これはピアノビジネスに限ったことではなく、いかなる業種であっても本業の話そっちのけで、必要以上に自分達の誠実さとか満足だのお客様の心云々…といったことを前面に押し出して言い立てられると、それだけで聞く気がしなくなり、逆に気分が白けてしまいます。

まずその「人間力」とやらでお客をじわじわ囲い込んで相手の判断力を奪い去り、あとはどんなものでもいいなりに買わせてしまうといった、そんな印象を覚えてしまいます。
少なくとも商品それ自体の素晴らしさというよりは、その店に携わる人間が皆真面目で努力家で、だから素晴らしい店だという訴えが先行していて、まず店そのものに共感を得させて、しかる後に商品を売る手法という気がします。

だいたい商売人というものは、なによりも商売がこれ第一で、それはいうまでもなく金儲けのため、利益を追求するためにやっているのにもかかわらず、まるで利益を犠牲にしてでも社会貢献とか人助けなどの、さも美しい事をやっているかのごとくで、人々から愛されるために日夜努力をしていますみたいな、歯の浮くようなことを言われると却って不自然に感じるものです。

さっそくその、本ができるほど話題のホームページというのを見てみましたが、マロニエ君は正直いって到底ノーサンキューなお店でした。

過去の販売分も含めて、すべてのピアノに動画による解説が付いていて、そこの社長とおぼしき人物が怪しい笑顔と語り口でピアノの説明をしますが、それがほとんど説明になっておらず、ただメーカーと型番、外装色などをいうばかりで、鳴りがすごいとか、これはめったに入りませんといういうような、どれも似たり寄ったりなセリフのオンパレード。
ピアノのディテールの映像でも、けっこうホコリまみれだったり弦が錆びていても「どうです、きれいでしょう~?」などと堂々と言い切ってしまいます。

そして、いつもお得意のセリフが「入ってきたばっかりなので、まだ調律はしていませんが」「まだファイリングができていませんので」「調整すればまだよくなるはずです」などと、必ず言うのはなんなのかと思います。
いやしくもピアノ販売の専門家で、それを商品として販売するのであれば、せめて最低限のクリーニングと調律ぐらいしてビデオ撮影するのが当然だろうにと思います。根気よく何台も見てみましたが、一台も「調律も調整もバッチリ、どうですこの音!」というビデオにはついに行き当たりませんでした。

専門技術者も数名いるようで、いちおう技術も売り物にしており、スタッフ全員の笑顔の記念写真まで公開されていて、さも何事も包み隠なさいオープンな会社であるかのようにアピールするのですが、なぜか肝心のピアノとなると、いつもどれも調整前の未完成状態ばかりとは、そのあまりなギャップに呆れてしまいます。
「うちはリピーターのお客さんも多いですよ!」といいますが、ネットの中古ピアノ店のリピーターって、どういう人達だろうかと思います。

でも、中にはあんな動画を見て「安心感」を覚えて買ってしまう人がいるんでしょうね。
マロニエ君は見れば見るほど「不安」が掻き立てられました。

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