大手楽器店の主催によるピアノフェアがこの連休期間中に開かれており、ちょっと覗きに行ってみました。
会場は今春オープンした博多駅・新ターミナル内の、阪急百貨店の上にあるJR九州ホールで、広い会場には電子/アコースティック合わせて実に100台以上ものピアノと名の付く楽器が展示されていました。
この会場はホールといっても床をフラットな体育館のようにもできる貸しスペースで、さまざまなピアノがズラリと展示されていましたが、なかなかめったにない壮観な様子だったことは確かです。
どうせ見るだけですが、これだけの台数を一堂に展示するピアノの催しは普段まずないので、一見の価値はあったというものです。
ただし、どうしてもグランドピアノは数が少ないのが残念ですが、それでもスタインウェイ4台(C/B/O/M)、ベーゼンドルファー、ベヒシュタイン、ザウター、ヤマハ2台、カワイ2台の11台が展示されていました。
とりわけ輸入ピアノはお値段も大そう立派なものでした。
ところで、会場に近づくと、中から盛んにジャズピアノらしき音が聞こえてきたので、一瞬、デモ演奏でもやっているのかとも思いましたが、いや待て、誰か腕自慢のあるお客さんが弾いているのでは?と思い直しました。中に入ると、案の定それは当たっており、ひとりの中年男性が熱心に1台のスタインウェイを弾いていました。
このところ人前でピアノを弾く人に対して、ちょっとあれこれと思うところのあるマロニエ君としては、ああまたか…というのが率直な印象です。
これがまた、人目も憚らず(というよりは人目を意識して?)ずいぶん熱の入った演奏で、側に近づいてもまったくなんのその、一心不乱に陶然となって弾いているその姿はちょっと異様な感じでした。
たまたま同行していた友人がその様子に驚いたのか、すかさず小声で「見られてることを意識してるね!」とマロニエ君に耳打ちしましたが、まさにその通りで、どうだ!といわんばかりに臆せず熱っぽい演奏を続けています。
奥では、別のピアノの調律が行われていましたが、そんなことも一向にお構いなし。
この御仁の演奏はしばらく続きました。
いやはや、たいした度胸の持ち主というか、そもそも神経の作りそのものが違うのかもしれません。
コンサートや発表会ならそれなりのスタイルも大儀もあるからまだわかるのですが、こうした単なるピアノの展示即売会の広い会場の中で、我一人、任意の状態であれだけ堂々と弾きまくるというのは、こういっちゃ悪いですが、やっぱりピアノを弾く人(すべてではないけれど)の感覚は、ちょっと普通とは違うと思います。
そのマロニエ君はといえば、ほとんど単音を出すぐらいで、弾くというような次第にはとても至りませんでした。
もちろん個々のピアノには関心があるので、弾いてみたいという気持ちはありますが、周りの空気をみたらそんなこと、とてもできる状況ではありませんでした。
奥で調律している人がたまたま顔見知りというか、我が家のピアノも一度見ていただいたことのある方だったので、その人とちょっと言葉を交わしている中で、「あのピアノは弾いてみられましたか?」などと言われますが、幸か不幸か、マロニエ君はそんな勇気は持ち合わせていません。
そうこうしているうち、やがて小さなコンサートが始まり、この楽器店の教室の講師の人達が代わるがわる演奏をはじめましたが、フルートの伴奏やソロでショパンのエチュードを弾いた講師の方は、ピアノクラブ内で3人ほどが習っていた、よく名前を聞く名前の先生その人だったので、おやと思ってとくと拝聴しました。
ピアノクラブといえば、このコンサートを聴いている中にも、クラブの方がご夫妻でおられたし、前日には同会場でリーダー殿がまた別のサークルの方と遭遇した由で、みんな同じような行動を取っているということでしょうか。