関東人

関東に引っ越しをしていった友人から聞いた話。

この友人は新しい家にグランドピアノを運び込んだのですが、過日はじめての調律師さんがやって来て、長旅のあとの初の調律作業がおこなわれた由でした。

いきなり笑ってしまったのが、マロニエ君も久々に聞く関東人のあいかわらずな様子でした。
マロニエ君自身も学生時代から8年間関東で暮らしましたので、おおよその関東人の特徴みたいなものは知っているつもりでしたが、久しぶりに聞くその様子には、なにやら時代とともにますますパワーアップしているのでは?と思ってしまうようなものでした。

まずいきなり友人が…ン?と思ったらしいのは、初めての電話のとき、用件が終わっての切り際に、わざわざ「これからプロのピアニストのところで打合せをしなくてはいけませんので、それでは」と言ったそうで、ここでまず最初のチェックをされてしまったようです。マロニエ君も嫌な予感がしつつもとりあえず失笑してしまいました。
電話を切ったあと、その人がどこに行こうと関係ない事なのに、「プロのピアニストのところで打合せ」というところが、この方なりの、まず手始めの自己アピールだったようです。

調律当日も、その顛末というか話の内容を聞くと、呆れて腰がクニャクニャになりそうでした。
どんな話の流れかは知りませんが、その方は自分のホームページは持っていないとのことで、普通はホームページなんてあればある、ないならない、ただそれだけのことですが、そこにもちゃんとした理由があるらしく「自分で作ると良いことしか書きませんから…」「ホームページがなくてもちゃんと人が評価してくれる」などと、さも謙虚で真っ正直な直球勝負の人のようにおっしゃるそうです。

また、自分は今もとても忙しいが、昔はさらに正月など芸能人の登場するような仕事もあったから大変だったが、それが不景気でなくなったお陰でようやく正月三が日が休めるようになったとか、現在は1000人!ぐらいのお客さんがあるなどと、こういうことを来宅してわずか2分以内ぐらいで一気に言い出されたそうです(笑)。

作業時間を含めて、わずか2時間ほどの滞在だったようですが、そんな中にもご自慢トークのあれこれが惜しげもなく連発だったようで、そりゃあなにより精神的に忙しいはずだと思われます。
また、自分がいま支援しているミュージシャンというのがいるらしく、その人は将来必ず大ブレイクするとかで、チケットまでしっかり売りつけられたというのですから、いやはや…。
曰くチケットは「僕は信用があるから、200人ぐらいのコンサートでも声をかければ50枚ぐらいはすぐに売れますから」とのことです。

で、自分のホームページでさえ不要だと言ったわりには、このミュージシャンのホームページに自分の事が出ているのはよほど嬉しいのか、とにかくそこを見て欲しかったらしく、その場でパソコンを開かされ、自分が出てくるページまでしっかり案内されたそうです。
関東人のこんな矛盾は指摘するとホントに際限がないんですが、彼らと仲良くやっていくためにはそのあたりはプライドも絡んでいることなので、敢えて突っ込まないであげることが大事な点なのです。
きっと自分のホームページも本心では欲しいけど、作るとなると大変だし、いまさら出遅れたと思っているのかもしれませんね。
もうこれ以上は控えますが、仕事で来ているのにどことなく意地悪に思える言葉や瞬間もポツポツあったとか…。

まあ、大なり小なり関東人というのはこういう体質が身に付いていて、さりげない会話の中にも、自分が相手に聞かせたいフレーズはしっかり組み込んであって、さも自然に、水が流れるようにさらさらと自慢しまくるのは常識なのです。
毎日のすべてが戦いとやっかみとホラとつっぱりの連続で、とっても気の毒なんです。
ただし、ここで言っているのは、関東人とはいっても、いわゆる先祖代々の地つきの人達というよりは、主には本人もしくは親などが田舎や地方の出で、現在は事情があって関東暮らしをしていて、日夜その荒波をかいくぐって生きている大多数の人のことです。(この調律師さんがどうなのかは知りませんけれど。)

はじめからみんながそんな気質だったとは思いませんが、関東という人の欲の海のような厳しい環境の中で暮らして行くということは、否応なく激しい競争条理に巻き込まれ、動植物が環境に適応するごとく、この荒海に呑み込まれないよう虚勢を張りながら生きる術が身について、ついにはこんなトークが口を開けばオートマチックにできるようになるのでしょう。
例えばその中心地である東京、ここにはたしかにすごいものがたくさんありますが、同時に過当競争も激烈で、最先端で飛び回っているような一握りの人はいいのかもしれませんが、普通の人のごく平凡な生活レベルという点ではかなり疑問があると思われます。

マロニエ君が人から聞いた話で呆れてしまったのは、ある人が言うには「東京に較べると福岡は何かと出費が嵩んで困る」とぼやいていたとか。
えっ?生活費が嵩むのは東京では?と思っていたらそうではなく、本気で倹約して切りつめた生活をするとなると、本当に安いものがあるのはこれもまた東京なのだそうで、福岡などはその下限が甘いからダメだというものでした。
思わず唸りましたが、これもまた関東という地域の地盤の厳しさを表しているように思いました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です