掘り出し物CD

夕方から天神に出たついでにCD店を覗いてみると、なんとレジの横でCDのワゴンセールのようなことをやっていました。
ワゴンセールというだけならいつでもあるのですが、今回はさらにいろいろと珍しいものが投下されており、それらがまるで叩き売りみたいな値段が付けられていました。しかも、そこにはなかなかのレア物が埋もれていることがわかり、つい興奮してゴミ漁りのようにして6枚のCDを買いましたが、支払ったのは合計3500円強でした。

中には買った本人がいまだにどういうものかよくわからないようなものまであり、それは恐くてまだ聴いていませんが、ともかくこういう捨て値みたいな価格で、変なCDを買ってみるというのは正に宝探しで楽しいものです。

もちろん充分まともなものもあるわけで、ドイツの中堅でドクター・ベートーヴェンと呼ばれるミヒャエル・コルスティックのシューマン(クライスレリアーナ&謝肉祭)や、山本貴志氏のショパンコンクール・ライブといったものも含まれています。

山本貴志氏はわりに評判が良いらしいのですが、なぜかマロニエ君はこれまでにほとんどその演奏に接するご縁がなく、その「人々が涙する」というショパンを聴いたことがありませんでした。
ひとつには邦人CDの3000円ルール(?)のせいもあるかもしれません。

どうやらポーランドのCDのようで、バルカローレにはじまりエチュード、スケルツォ、マズルカ、第2ソナタを経て英雄で終わるというものです。
クセのない丁寧な演奏ではありましたが、ショパンコンクールにありがちな青春の燃焼みたいなものの少ない、あくまでも身につけたペースをキチンと守り抜いた、交通違反のない律儀な演奏だったと思います。

とくに日本人特有の折り目正しさにあふれた、キメの細かい美しい演奏であることは間違いないと思います。強いて注文を付けるなら、この人なりの味わいがもうひとつ欲しいところ。

きっと山本氏のコンクールにかける気合いの現れだとは思いますが、曲想にあわせて「シューッ!シャーッ!シェーッ!」という激しい吐息が入っているのが、このCDを聴いている間ずっと気になりました。
生のステージの臨場感ともとれますが、ショパンの繊細な音色が流れ出る中では、子供がプラモデルで熱心に遊んでいる時の声みたいで、あまり相応しいものとも思えませんでした。

それと、CDのどこを探しても記述はなかったものの、おそらくピアノはヤマハだと思われますが、全体に響きの固い、音の通りのよくないピアノだったことが、演奏をひとまわり小さなものにしてしまっているようで、それがとても残念に思われました。
もちろん本人が選択したのでしょうし、ダイナミクスよりデリカシーを採ったのかもしれませんが、ヤマハに限っていえば、その五年後に登場するCFXはやはり劇的変化を遂げたもんだと思います。
とりわけ中音域の発達は大変なものですが、それが全音域でないところが今後の課題という気もしますし、全体のバランスという一点においてだけなら、この時代のピアノ(CFIIIS)のほうがまとまりはいいといえるかもしれません。

コルスティックのシューマンは骨格のしっかりした力強い表現はなかなかのものでしたが、いささか音色に対する配慮が足りず、粗っぽく音が割れてしまうところがあるのが惜しい点でした。迫力は申し分ないけれども、もうひとつ愛情深さみたいなものがあればと思いました。ジャケットの写真を見るたびサルコジ大統領を思い出します。
ともかく思いがけないCDが買えて幸いでした。

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