6枚のCD

過日、CDのワゴンセールを漁って買い求めた6枚について。

『山本貴志のショパン』については既に書いたので省略します。

『ミヒャエル・コルスティックのシューマン』
男性的な表現のスケールが大きいのは魅力ですが、音色の問題と、もう一つはドイツ人故なのかどうかはわからないものの、聴く者の詩的情感に訴えるような面がやや希薄で、説明的かつ堂々とし過ぎたシューマンだったように思いました。ゆるぎないガッチリ体型のクライスレリアーナ&謝肉祭を聴きたいという時にはもってこいの1枚でしょう。
ただし、あまりにドシッと腰の座ったシューマンというのは却って妙でもあり、そもそも音はあてどなく彷徨い続け、ひっきりなく情緒が揺れるところがシューマン作品の魅力でもあるので、これがドイツ的なシューマン演奏かといわれたら確かに疑問ですが、それでもとにかくひじょうに聴きごたえのあるアルバム。

『アンジェラ&ジェニファー・チュン(ヴァイオリン)のファンタジー』
演奏自体はとくだん光ったものがあるとも感じなかったものの、両者ともたいへん上手くて息が合っていて、じゅうぶん観賞に値するものでした。
演奏曲目が魅力的で、マルティヌーの2つのヴァイオリンとピアノのためのソナタ、ショスタコーヴィチのヴァイオリンデュオのための3つの小品、ミヨーの2つのヴァイオリンとピアノのためのソナタ、イサン・ユンのソナタなど、普段あまり聴く機会の少ない作品ばかりなのは得をした気分でした。
マルティヌーは革新的でありながらリズムの刻みなどが耳に心地よく、ショスタコーヴィチは、えっこれが?と思えるほどやさしげな旋律、ミヨーのエキゾチズムなど面白いものばかり。
この二人のヴァイオリニストは名前からも写真からも、きっと中国系のアメリカ人姉妹だと思われます。

『ヴォイス・オブ・ザ・ピープル』
こう題されたアルバムは、大半がフランクの作品と思いこんで購入したものの、よくみるとあのセザール・フランクではなく、ガブリエラ・レナ・フランク?という少なくともマロニエ君はこれまで聞いたこともない作曲家でガックリ。
どんなものやら聴いてみると、これがまたなんともへんな曲ばかりで、しばらく我慢して聴いていまたものの、ついに嫌になってストップしました。後半にはショスタコーヴィチのヴァイオリンソナタが入っていますので、それは後日あらためて聴いてみたところ、これがまたどうにもつまらないもので、演奏のせいもあるかもしれません。
これは完全に失敗でした。

『スザンヌ・ラング ピアノリサイタル』
若い女性ピアニストによる演奏で、リスト、チャイコフスキー、ラフマニノフ、ヤナーチェク、スメタナ、シューベルト、シチェドリン、ファリャ、プロコフィエフという、なんとも目まぐるしいほど多彩な作曲家の作品が登場するアルバムですが、その選曲の意図も目指す方向も不明で、聴いていて何も魅力を感じませんでした。
演奏レベルもあまり高くなく、いまどきのピアニストとしては、わざわざCDまで作って売るような腕前ではないという印象。なにしろ演奏がパッとしないので、とうぜん曲のほうでもこれといった力を得て本来の姿をあらわしてくるところがありません。
これなら日本人の名もないピアニストの中にもっと優れた演奏をする人がいくらでもいるはずです。これもまた失敗でした。

『スカルコッタス ピアノと室内楽作品集』
近年再評価が著しいといわれるニコス・スカルコッタス(1904-1949)の室内楽作品集で、これはなかなかに聴きごたえのあるもので、6枚中最高のヒットでした。シェーンベルクにも学んだという十二音技法の作品は、しかしシェーンベルクやベルクがこの分野の開拓者だとすると、より一層自由になって近代的なセンスがきらめいており、ある意味では十二音技法をよりしなやかに使いこなした作曲家といえるのかもしれません。
ピアノのウエリ・ヴィゲットという人が、これまたなかなか上手いのには舌を巻きましたし、ピアノの音はいかにも美しいスタインウェイの音。
収録時間もたっぷりで80分を超えるほどですが、何度も聴いても飽きることがなく、これはまさに拾い物だったと思います。

6枚中失敗は2枚、まあまあが3枚、ヒットが1枚であれば充分以上に元を取ったと言えそうです。

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