ANAの背面飛行

パイロットの操作ミスで、沖縄から東京に向かっていたANAのボーイング737が浜松付近でほとんど背面飛行に及んでいたことがわかり、このところの報道メディアはしきりにこれを取り上げていました。

この事故は、飛行中トイレに立った機長が戻ってきたときに、副操縦士が操縦室ドアのロックボタンを解除する操作をしたとき、誤って機首を左右に動かすつまみを2回(たぶんドアが開かないからもう1回となったのでは?)操作し、それにより機首が急激に左を向いて同時に下向きになり、機体は自らの重量を支えられずに、ほぼ裏返しになりながら1900メートルも急降下したというものです。

最近の飛行機はテロやハイジャック防止のために操縦室のドアがいちいちロックされる仕組みになっているとかで、中からロックを解除しないと開かないようになっているんだそうです。

機体がほぼ裏返しで急降下したというのは、ごく最近フライトレコーダーの記録解析に基づいてANAが発表したものでしたが、この事故が起こったときにマロニエ君は友人らと話していたことは、「操縦室のドアロックを解除する」と「機体の方向を変える」という、まったく次元も性質も異なる内容の操作を、訓練を受けたパイロットが間違えるなんてことがあるのだろうか、という点で大いに疑問でした。

飛行機の操縦室のことは知りませんが、常識的にいうと、操作ボタンなどはその機能によっておおよその位置が分類され、人間の感覚を必要以上混乱させないような配慮がされているはずで、とりわけ多くの人命を預かる乗り物などにおいて、それは工学設計の半ば常識だと思ったからです。

ところが、ほどなく新聞紙上に問題のスイッチ周辺の写真が掲載され、間違えた二つのつまみに2つの赤いマルがつけられていましたが、それは大きさがやや異なるものの、驚いたことにいかにも似たような色と形状で、しかもその二つはごく近い(写真で見た印象では10センチ以内ぐらい)だったので、これを間違えるのはなるほどあり得る話だと思いました。

もちろん詳しい状況はわかりませんから、何かを断定することはできませんが、写真を見た限りでは機体の設計のほうに問題があるようにも思われ、ミスをおかした副操縦士が少々気の毒にも思えてきたのでした。
マロニエ君がパイロットならそれこそ2回に1回は間違えそうです。

ところがワイドショーなどでは、この問題で元パイロットまでスタジオに呼んできて、えらく深刻な様子で、とくに司会者やタレントのコメンテーターはつまみを間違えた操縦士を非難しまくっていました。
最近は本来必要と思われる自分の考えとか社会に対する批判などはろくにできないクセに、ひとたび人命などという建前がつくと、一気に語調を強め、総攻撃となるのは見ていて違和感を覚えます。

しまいには、ある若いタレントが、「パイロットはお客さんの命を預かっているという自覚がないのではないか」「たかだか3時間のフライトでトイレに行くなんて、たるんでいるからだ」「自分達でも仕事の時はトイレに行けないことがなる」などと、まるで人間の生理現象まで否定するような言い方をしたのは驚きでした。

もちろんパイロットには最上級の慎重さをもって操縦にあたってもらわなくちゃ困りますが、だからといって生身の人間ですからトイレぐらい行くのは当たり前でしょう。
わざとらしいコメントもほどほどにして欲しいものです。

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