福銀ホールの変身

土曜は考えてみるとずいぶん久々の福銀ホールだったのですが、会場に入ってリニューアルされていることをはじめて知って驚きました。
なんと座席がすべて一新されおり、ずいぶん立派なブラック基調のシートへリニューアルされているではありませんか! 調べてみると1年以上経っている様子で、それだけご無沙汰だったということでもあり、なぜか誰からもこのことを聞かなかったのです。

このホールの最大の自慢はなによりその素晴らしい音響で、とりわけピアノリサイタルなどには最良の響きを持つホールだと言えることは、以前もこのブログに書いたような気がします。

開館当時はホールの音響というものにそれほど注意が払われない時代だったこともあり、音楽雑誌などでもこのホールの音の素晴らしさが何度も話題になったりしたものですが、それは現在も第一級のレベルとして健在なのは嬉しい限りです。

しかしながら音響以外ではこのホール固有の欠点もあり、福銀本店が天神の一等地という恵まれた立地にありながら、そのホールはやみくもに地下深くにあり、しかも人を下へと運ぶためのエレベーターなどが一切ないため、このホールを訪れる人はまるで音楽を聴くための苦行のように、延々と連なる下り階段の洗礼を受けることになります。
まるで地下鉱脈へでも赴くように黙々と階段を降り続けると、ようやくホールロビーに到達。
ホールの入口にはロダンの考える人(本物で福銀が購入したもの)が鎮座し、その左右両脇の2ヶ所のみから会場に入るわけですが、そこはしかし客席のあくまでも最上部に過ぎず、着席するにはさらに地底へと階段を降り重ねなければなりません。

しかも、設計が古いためか、細かいところが今どきのように人に優しい作りではなく、その会場内の段差の間隔が不規則でバラバラなために、一瞬たりとも気が抜けずに、まるで探検隊のように足元が悪いのです。

この日もマロニエ君の背後で中年の女性が足を引っかけてものの見事に転倒する一幕があり、主催者のほうがそれを聞きつけてきて、ケガなど無かったかどうかなど大変な気の遣いようでした。折しもこのホールでは足元に用心しなくてはとしゃべっていた直後のことで、まったく言葉通りのアクシデントでした。

さらに終演後は、さんざん降りた分だけ今度は上らなくてはならず、ここへ来たときは、帰りは決まって登山感覚で一気呵成に階段を上り続けなくてはならず、地上へ出たときは、それこそ体がじっとりと汗ばみ息はハァハァとなるほどです。
身体的に辛いのは2時間前後ずっと座って音楽を聴くと、それだけでも疲れるし体は動かない状態になっていますが、その態勢からサッと腰を上げていきなりビルの4〜5階分の階段を登るのは相当ハードです。

階段の話ばかりになりましたが、このホールのもうひとつの弱点が、時代故のサイズの小ぶりな貧相な座席で、色も朱色系のあまり趣味のよろしいものとは言いかねるものでした。
それがこの度、見るも立派なシートに変わっており、シート自体も大型化している上に、その間には立派な木製の肘掛けが備わり、余裕もずいぶん生まれたのは目も醒めるような驚きでした。

おそらく座席数は減少したはずですが、掛け心地もよく、以前のことを思うと本当によくなったと、嬉しいような気分になりました。
階段はむろん以前のままですが、このホールの欠点のひとつが見事に改善されたことは間違いありません。

残るは最大の欠点である階段問題ですが、なにしろ大きな銀行なのですから、この際思い切ってエレベーターをつけて欲しいし、高齢者はもちろん体の弱い人にもどうぞ来てくださいという態勢を作って欲しいものです。

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