得した気分

先日、疲れた体に鞭打ってヤマハを覗いたところCDの処分市みたいなことをやっていました。
とはいっても、量的にはごくごく少数でしたが、なんと定価の半額以下みたいな値札が貼り付けられている上に、さらにそれは最終段階に達しているらしく、どれも3枚で999円という表示がされています。

おおお、これはすごい!と思ってさっそく物色開始となりましたが、なにぶんにも数がない上に、もはや大したものは残っていませんでしたが、それでもありました。

●ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 シュターツカペレ・ドレスデン
R.シュトラウス:ツァラトゥストラはかく語りき/ドン・ファン DENON

●ポール・マクリーシュ指揮 ガブリエリ・コンソート&プレイヤーズほか
ハイドン:オラトリオ《天地創造》2枚組 ARCHIV

●田部京子(ピアノ) マルティン・ジークハルト指揮 リンツ・ブルックナー管弦楽団
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番/第5番 DENON

という、しごく真っ当なCDを3点購入して千円札を出して1円おつりをもらうのは、さすがに申し訳ないような気分でした。

とりわけR.シュトラウスはマロニエ君としては文句のつけようがない名演で、オーケストラも超一流なら、作品との相性も最上のもので、実を言うとブロムシュテットのR.シュトラウスは初めて聴いたのですが、これほどのものとは予想もしておらず、そのあまりの素晴らしさに衝撃を受けました。あと2枚、ティルや英雄の生涯、メタモルフォーゼンなどが発売されているようですから、これはぜひとも入手しなくてはならないCDとなりました。
R.シュトラウスはこれまで、ずいぶんいろんな指揮者のものを聴いていましたが、これは一気に決定版に躍り出たという気がしました。これひとつでも大収穫です。

《天地創造》は解説によると、マクリーシュはハイドンをウィーンの伝統様式の中で捉えることはせず、ヘンデルに連なる大編成の崇高な音楽としてこのオラトリオを手がけているのだそうで、聴いていてなるほどそうかと思いました。また初版に添えられた英語版のお粗末さを払拭すべく、練りこまれ熟考された歌詞やレチタティーヴォで演奏されている点も注目です。
演奏は迷いのない、きわめて信頼性の高い安定したもので、音質も良く、この長大な音楽を美しく、そして精密かつキッパリと表現しているのは見事というほかありません。2枚組で定価は5000円もする商品で、こんなに安く買えたことは嬉しいけれど、録音も新しいのになぜ?という気がしてなりません。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲は、田部京子のピアノが美しく繊細ではあるものの、いささか安全運転にすぎてもうひとつ面白さとか引き込まれるものがありませんでした。この人はもともと感情表現はいつも押さえ気味で、きっちりとした和食の盛りつけのような演奏をする人なので、こういう演奏になるのも頷けますが、そこはやはりベートーヴェンなのだから、もう少し何か迫りが欲しかった気がします。
日本人的繊細さと、塵ひとつない整然と片づけられた部屋のような美しさは立派ですが、音楽はただきれいに整えたら済むという世界ではないのだから、もっと本音で直截に語って欲しいものです。

たまにこんなことがあるから、やっぱり天神に出るとお店を素通りはできないなぁという確信を、またも深めてしまったようです。

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