シゲルカワイの疑問

評判が高く、マロニエ君自身も一定の好感をもっていたシゲルカワイ(SKシリーズ)ですが、その印象もだんだん怪しくなってきました。このところ続けて聴いたコンサートやCDからの印象です。

ショールームなどで弾いてみると普通のRXシリーズよりもピアノとしてひとまわり懐が深く、音も太めの渋い音がするし、タッチにもある一定のしっとり感のようなものがあって、さすがにSKシリーズは格が違うらしいと思わせられるものがあるものです。
実はどこか、なにかが引っかかっているのに、それが何であるかまでは明確にわからずにいたわけです。
というのも弾き心地はいいし、RXシリーズより明らかな厚み深みがあるものだから、その長所ばかり気をとられてしまうのでしょう。

一番問題を感じるのは要するに音色の問題です。
ピアノの音は自分で弾いてみないとわからない部分があると同時に、自分で弾いているとわからない性質の要素もあって、人の演奏に耳を傾けることによってはじめて見えてくるものというものがあることは、そういう経験をお持ちの方ならすぐにわかっていただけると思います。

そして、SKシリーズの一番の弱点はこの「人に聴かせる」という部分じゃないかと思います。

ただ単に聴く側にまわると、意外に音色が雑で、あまり芸術的とは言い難い。
ピアノの音にもいろんな種類や傾向があって、現在の主流はやはり明るくブリリアントな方向でしょうが、それでもないし、ではドイツピアノのような渋くて重厚な音という方向もありますが、どうもそういうものでもない。
フランス的な柔らかな響きなどはいよいよもって違います。

ひと言でいうと基本となる音色に色艶がなく、音自体も暗めであるにもかかわらず、今風な華やかさやパワーもありますよという建前を感じるわけで、作り手の思想に一貫したものが感じられません。
ピアノが生来持って生まれたものとは逆の性格付けをしようとしているところに大きな矛盾があるようで、これがこのピアノの最大の問題ではないでしょうか?

コンサートグランドにしても、マロニエ君としては従来のEXのほうがスケールは小さくても音楽的には好ましいということを折に触れて書いてきましたが、やはりその印象は今も変わりません。

小さいサイズのピアノでも、SKシリーズはいかにも高級シリーズという風格は備えていますし、音も堂々としているかに聞こえますが、本当に美しい音楽的な調べを奏でるのは、もしかしたらレギュラーモデルのほうでは?という気がしてきました。

マロニエ君の友人知人もカワイのレギュラーシリーズのユーザーが数名いますが、それぞれに本当に美しい「カワイはいいなぁ」と思わせる音色をもっています。

ところがSKとなると、そういうカワイの独特の美しさとは違った、色艶のない、野太くて荒っぽい響きになっていると感じるのです。これは最高峰のSK-EXでも、それ以外のモデルも同様の印象で、その点じゃシリーズとして一貫しているかもしれませんね。目先の効果としては太くていかにも響板が鳴っているような音はでているけれども、要するにそこから先の奥の世界がない。

本当に優秀なピアノは間近で聴いていると大してきれいには聞こえなくても、少し距離をおくと音が美しい方向に収束されて時に感動さえするものですが、SKシリーズは距離をおくと逆に音色がばらけてしまって、音楽に収拾がつかなくなる。

これは、もしかしたら本来そこまでの能力を想定していない設計のピアノを、無理にグレードアップしたためにどこかで破綻が起きているような印象でもあります。
まるでピアノ工房の職人が作った、チューンナップピアノ的な傾向にあるのではないかと思います。

ピアニストによるSKシリーズ使用のコンサートはパッと思い出すだけでも4~5回は聴いていて、サイズも様々ですが、すべてに共通しているのは音に密度感がなく、暗い感じの音を遮二無二鳴らしているだけという印象でした。
けっきょくカワイの最良の選択は、レギュラーシリーズを家庭などで使うというスタイルなのかもしれません。

シゲルカワイの疑問」への1件のフィードバック

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    世界中でSKが評判になっているようですが、ウルサイと感じました。

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