文化の日は、ピアノクラブの定例会で、メンバーの方所有のプライヴェートスタジオで行われました。
あいかわらず素晴らしい会場で、これが個人の空間というのは何度行っても驚かされます。
ピアノはディアパソンの新型のDR500という奥行き211センチのモデルで、ヤマハでいうと6サイズ、スタインウェイではB型という、いわばグランドピアノ設計の黄金分割ともいえるサイズです。
数ヶ月前に弾かせていただいたときにもその上品で美しい音色、さらには会場の音響の素晴らしさとのマッチングには深く感銘したものでした。
しかし、今だから言うと、強いていうならピアノのパワーはもう一つあればという印象が残ったことを告白します。
その後、調律師さんを変更されて調整を入れられ、さらに定例会の2日前に再度その方によって調律されたということを聞きましたが、果たしてそのピアノ、目を見張るほどの大きな変化を遂げていました。
音色に豊かな色艶が加わり、好ましい芯が出てきており、さらにもっとも驚いたことには、以前よりもあきらかにひとまわりパワーが増していたことでした。
やわらかさはちっとも損なわずに、逞しさと色気という表現力の要の要素が出てきていました。
まさに第一級のピアノに変貌していましたが、これも場所とピアノが同じであることを考えれば、あとはもう調律師の適切な仕事による効果だと考える以外無いでしょう。
良いピアノというのは弾き心地がよく、演奏者を助けてくれるものですが、まさにそんなピアノでした。
ただ皮肉なもので、以前はこの空間とピアノの響きのバランスが見事に調和していたのですが、ピアノの状態が進化して音量と音の通りが増したため、音響空間としては、ほんの少しですがやや響きすぎる感じになってしまっていたと思います。
オーナーの方もそこには薄々気がついていらっしゃるようで、「もう少しスタジオを吸音してみます」というメールをいただきました。
また大変かもしれませんが、のんびり実験のようにやっていかれるらしく、ピアノが良く鳴るようになったがための対策なら、基本的に喜ばしいことですけどね。
まあ、つくづくと楽器と空間の関係というのも、微妙で難しくてやっかいですが、だからこそまたおもしろいと言えるのかもしれません。
ちなみにこのサイズでは、日本製ピアノだけでも、ヤマハのC6、S6、CF6、カワイのRX-6、SK-6、ボストンのGP-215、同じくディアパソンのDR211(DR500との違いは弦の一本張りか、押し返し張りかの違いのみ)の7種がありますが、このスタジオのDR500は間違いなく最良にランクしていい優れたピアノだと思います。
とくに興味があるのは同じボディと響板を使うカワイのRX-6、ディアパソンのDR211とこのDR500はどのように違ってくるかの比較ですが、そんな機会はまずないでしょう。