パン屋のチェロ

今日は休みで、とあるパン屋にパンを買いに行ったところ、一足先に大きなチェロケースを抱えた男性が店に入っていくのが目に入りました。するとその人、店の奥の飲食スペースに腰を下ろすなりチェロを取り出し、まわりにお客さんがいるのもお構いなしに、いきなり音を出し始めました。それも遠慮のない力でぐいぐい楽器を鳴らし、ただ練習のようなことをやり出しました。

営業中の店内で、あれだけ周囲に憚りなく音を出すからには、おそらくお店のほうは承知のことかもしれませんが、この異様な光景にはいささかびっくりでした。
もしかするとプロのチェリストで、あとでイベントのようなことをするのかもしれませんが、あれはちょっといただけませんでした。

思いがけないところで耳にするチェロの、その朗々とした音はたしかに美しいものでしたが、いかにも自信満々なその行動は、むしろ周囲から注目される快感をひとり楽しんでいるようで、まるでその人のアクの強いメッセージを聞かされたようでした。

生のチェロの音を聞けたのに、帰りはちっともいい気分ではありませんでした。

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