このようなブログで病気の話をするのもどうかと思われますが、マロニエ君は昔から呼吸器が弱くて、梅雨や季節の変わり目などは喘息が出てしまう、いわば気管支の持病持ちというわけです。
当然ながらかかりつけの病院があって、そこの先生は呼吸器の専門で、お若い頃はそちらの分野で有名な大病院にお務めだったようで、後年現在の医院を開業されたという経歴をお持ちのようでした。
知り合いに紹介されてここに通院することになったのが、約4年ほど前のことです。
ひどいときは毎週のように通院したりした時期もありましたが、その後は小康を得てご無沙汰することがあったり、またちょこちょこ行ったりの繰り返しでした。
それが昨年ぐらいだったか、先生ご自身が病気(病名は知りません)になられ、どきどき代診の先生などがこられるなど心配していたのですが、その後はまた復活されて診察を続けておられました。
しかし、今年に入ってからというもの、傍目にもわかるほど弱られた様子で、お若くもないこともあり、これはいつまでもつかという危惧が頭をよぎっていたのは正直なところでした。
この医院はある特殊な治療をしてくれるということもあって、自宅から十数キロ離れた不便な場所ではあるものの、面倒くさがり屋のマロニエ君にしては、珍しくこれだけは熱心に通っていた一時期もありました。
さて、最近のように寒さが日増しに厳しくなってくるような季節の変わり目は喘息持ちにとってはキツイ時期で、このところちょっとまたいろいろと不都合が出てきはじめていたので、吸入薬などの薬のひと揃いを準備しておくべく電話をしたところ、現在また先生が入院されているので診察は出来ず、薬のみ出しますということになりました。
夕方、病院に到着して中に入ってみると、なるほど受付以外はもう人影もなく真っ暗で、すでにマロニエ君のぶんの薬は窓口に準備されていました。
保険証を出して支払いをしようとすると、なんと今回はそれには及ばないと言われました。
驚いてなぜかと聞いてみると、先生曰く、自分が診察ができず患者さんに迷惑をかけているのだから薬代はもらわない、また普通は診察なしで薬は出さないのだけれども、呼吸器の場合、患者さんが薬が必要なときにそれが手に入らないと皆さんが困られるので、長くかかりつけた患者さんに限って今回は敢えてそのような処置をしているとのことでした。
今回はとくに薬の量が多く、しかも吸入薬はけっこう高額なので、それをすんなりいただくのはどんなものかと思いましたが、「皆さんにそうしていますから、ご心配なく」と何度も言われて受け取ることになりました。
さらに驚いたことには、今後のために別の病院を紹介するとのことで、呼吸器専門の病院の手書きのリストのコピーが添えられていて、どこに行くか決まったときには紹介の電話(紹介状が書けない状態なので)をするということでした。
そんなものまで添えられているということは、もうここの先生が診察に復帰されることがないことは明らかで、「そんなにお悪いのですか?」と聞くと、病院の事務の女性はしずかに頷きました。
気が付くと、いつも3〜4人は必ずいた看護士さんもまったくいなくて院内はしんと静まりかえっています。
お歳でしたが、とても可笑しみがあって可愛いところのある先生でしたが、なんだかお別れの品をいただいたようで、高い薬代を払わなくて済んだかわりに、なんだかすっかり打ち沈んだ気分で帰りました。
期間から換算してもたぶん100回近くは行ったはずで、それがもう二度とお会いすることがないと思うのは、なんともやるせない気分でした。
そして、今どきの儲け主義の医師と違い、最後までこのように患者の心配をしてせめてものけじめをつけられる姿勢にもいたく感銘をうけました。
なんとなく、がっくりしてしまい、病院のリストにはまだ目を通していません。