嶮しい道

今日は思いがけない来客がありました。
この方がむかし父のアトリエのお弟子さんだったのは、マロニエ君が子供の頃でした。
お弟子さんたちの中でもちょっと異色の存在で、非常に厳格でストイックなところがあり、父の周辺を我が事のように取り仕切っている趣がありました。みんなから怖れられる存在で、マロニエ君もたびたび叱られた思い出があります。
数年後、彼女は一大決心のもと、別の道を志すとしてアトリエを辞めていきましたが、それは文学と歴史研究の道に身を投じるためでした。
とりわけ地元の歴史研究に没入し、野村望東尼の研究では第一人者の地位を確立して、すでに西日本新聞社から数冊の著作が刊行されていますが、先ごろ福岡市文学賞を受賞され、我が家に報告の挨拶に来てくれました。

しかし書籍出版にも音楽CDと変わりない苦労があるようで、一定量は作家買取の義務を負わされるらしく、数が望めるジャンルでないだけに文化研究の道の嶮しさも大変なようです。
それでも自分の努力が報われて書籍という形態に結実するのは何物にも代えがたい喜びがあるようです。

聞けば一冊の本を出すには、文字通り山と積まれた資料の谷間で気の遠くなるような調査と勉強の連続だそうで、やはり一つのことを成し遂げるのは生半可なことではない不屈の精神とひたむきな情熱が欠かせないようです。
道を究めるというのは損得も寝食も忘れて、自分の人生をひとつのことにあてがえるかどうかなのかもしれません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です