このところ気温も下がってきたことでもあり、天神に買い物に出かける際、服装もいつもよりちょっと暖かいものを着て、靴も普段あまり履かないものを引っ張り出しました。
普段よく履いている靴にくらべると、履くだけでもいちいち革の紐を絞めたり緩めたりと、久しぶりになんだか面倒臭い靴だなあと思いましたが、ふだん下駄箱に入っているだけでめったに履かないので、たまには…という気を起こしたのがそもそも間違いでした。
その靴はマロニエ君が持っている靴の中では、そう悪い物ではないし、あまり履いていないので見た目はきれいなのですが、もうかれこれ10年ほどに前に買ったもの。なんとなく履きやすいものに流れてしまい、普段はあまり履かないことが常態化していました。
濃い茶色のバックスキンの革ひも付きシューズで、メーカーは○imberlandという、べつに一流ではないけれども、大衆品の中ではまあまあのブランドだろうと思います。
ここの製品は、いまでこそ普通のモール内の靴屋なんかでも見かけるようになりましたが、当時はそれほどでもなく、たしかそれなりの金額で買った記憶があります。
これを久々にひっぱりだしたことが、この日大変な目に遭うことになるのです。
玄関を出て階段を降りるだけでも、いつもとはずいぶん様子がちがうなあと感じていましたが、このとき急いでいたこともあってとりあえず車にとび乗って天神に向かい、駐車場に車を置いて歩き出したとたん、「あれぇ?」というヘンな感触があらわになりました。
まず底が硬いのか、歩くたびにコツコツとわざとらしい音がするし、靴全体も非常に硬くて、さらには靴それ自体が重くて、単純な話、かなり歩きにくいわけです。
その感触はなんとも名状しがたいものでしたが、妙に足が靴から圧迫されているにもかかわらず、歩く動きに靴が付いてこないので、知らず知らずのうちに足の指先に力を入れることで、せめて靴との一体感を強めようとしながらせっせと歩くという感じです。
ところがそうこうするうちに、事態はさらに悪化、歩くたびに靴下がズレはじめました。
「これはマズイ!」と思いましたが、もうすでに雑踏の中に踏み入れていますからどうしようもない。
やむを得ず歩を進めるものの靴下のズレはいよいよ甚だしいものとなり、もはや一歩毎に靴の中で少しずつ確実にそれがずれていくのが感触でわかり、気持ちが悪いといったらありません。
立ち止まって靴下を引っ張り上げますが、また歩けば、また確実にズレて、最終的には2〜30歩ごとに立ち止まって天神のど真ん中で「靴下あげ」をしなくてはならなくなりました。
建物内のムンムンした暖房と、この合わない靴がもたらす不快感が合わさって、気分は最悪、次第にじっとりと脂汗がにじんできたことが自分でわかります。本屋に行っても、ちょっと売り場を見て回る僅かな動きにさえ、ちょっとずつ靴下が確実にずれていくのが体感できて、こんな調子で30分以上過ごしていると、ガマンも限界に達しました。
大概のものなら、その場で脱いで手に持って行くところですが、さすがに靴ではそれもできません。
なーにが○imberlandだ!そのへんの3000円ぐらいの靴のほうがよっぽどマシじゃないかと思いながら、用事を最小限に済ませて、あとは省略、足をガクガクさせながらなんとか駐車場に戻りました。
帰宅して玄関で靴を脱いだときは、もう全身が苦行から解き放たれたようでした。
あとで点検してみてわかったことは、この手の革靴などはよほど定期的に履くなどして、いわゆる揉みほぐしをしていないと、経年変化で靴底の柔軟性が著しく損なわれるようです。
実際、この靴の底は木の板のようにカチカチになっていて、そのせいで歩くときも足と一緒にしならずに、靴下を引っぱっていたようです。
というわけで、市内にマロニエ君の友人オススメの「靴の病院」というのがあるので、靴底張替のため、入院させるか否か思案中です。