芸術家は絶滅寸前

今年はショパンの生誕200年という節目が商業主義の格好の餌食になっているようです。
ヤマハで音楽雑誌をパラパラめくっていたら、さる日本人ピアニストがこの関連イベントで途方もないことをするらしいことを知って驚愕しました。

なんと、ショパンのソロ全曲を一日16時間かけて演奏するというまさに曲芸師さながらの企画で、ギネス記録への挑戦も兼ねているとは、あいた口がふさがりません。
ショパンの芸術はそういうこととは真逆の極みにあるもので、そんなことをしてまでとにかく人の注目を集めようとする関係者の思惑だけが生々しく感じられます。

芸術家が芸術の質を勝負にして生きられない時代の、浅薄な価値観が世の中を支配している責任もあるとは思いつつ、だからといってこのようなばかげた挑戦に自らの才能を浪費するのは、なんともいたたまれない気分になります。
いかに指さばきと暗譜とスタミナにかけては天才であろうとも、こういうことをする人をマロニエ君は決して芸術家とは思いません。
さらには、それを英雄視し快挙として素直に尊敬し憧れる価値観の人たちがいると思うと気持のやり場がなくなります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です