クリスマスケーキ

マロニエ君にとってのクリスマスとは、宗教とは一切無縁、ただこの時期は甘いもの好きにとってはクリスマスケーキというものを年に一度、買ってきてパクパク食べる口実に過ぎません。

毎年あれこれのクリスマスケーキを買ってみるのですが、これという店が定まっているわけではありません。
というのも、値段ばかり高い有名店のそれを買う気などさらさらないし、自分の好みの点からも普通でコストパフォーマンスに優れたクリスマスケーキがいいのです。
小さいくせに無駄な小細工ばかりされたカッコだけのケーキなどまったく関心もなく、ひたすら白の生クリームとスポンジとイチゴによるごく基本的なケーキが食べたいわけで、そんな美味しさがあって、なおかつサイズも大きければ更に歓迎です。

その点で我が家の近くのケーキ店は、個人経営で、作りはいかにもオーソドックスで味も上々、一時期はこれで決まりだという感じで数年間は買い続けていたのですが、なんと経営者の健康上の理由でこれがもう買えなくなり、またしてもクリスマスケーキ選びは振り出しに戻りました。

さて、何年か前でしたが、コンビニなどで販売しているヤマザキかなにかのクリスマスケーキを買ってみたところ、これが思いのほか美味しかったし、実際にスーパーやパン屋などに行くと、クリスマスケーキの予約受付中というようなポスターがあちこちにあって、そのうちどれかを予約しようか…ぐらいに軽く考えていたところでした。

で、先週末だったと思いますが予約をすべくお店に行くと、なんとまだクリスマスには一週間もあるというのに、クリスマスケーキ関連のポスターや案内などが一切ありません。???
なんで?と思って店員に聞いてみると、すでにクリスマスケーキの「予約は終了しました」ということで、なんたることか!と思いました。試しに他店にも回りましたが、デパ地下に至るまで状況はまったく同じでした。

今どきは、たかだかクリスマスケーキを買うにも、おっとりした気分ではこれを手に入れることはできなくなり、ずいぶん前からしたたかに予約などを完了していなくてはいけないという、今どきの油断のならない仕組みがようやく呑み込めて、ああ…こんなことまで、出遅れちゃいけないというか、なんだかピリピリした世の中に年々加速していくような気がしました。

これはおそらく業者が申し合わせている事のようでもあり、可能な限り売れ残りを出さないために、大半を予約性にして徹底的に無駄の排除をしている結果だろうと想像します。よく売れ残ったケーキを25日過ぎると値引き販売するというような話がありましたが、あんな悠長なことはもうしないということなのか。
社会に蔓延する、いかにもゆとりの無いサマをまざまざと見せつけられるようでした。

そもそもマロニエ君はあの馬鹿のひとつ覚えのような「一日○○限定」とか「期間限定」「季節限定」というのが嫌いです。表向きは、まるで少ししかない、さもありがたいようなもののようなイメージですが、要は在庫や売れ残りを極力排除したいという、販売者側のリスク回避とエゴを美辞麗句に置き換えて、さらにはお客さんの心理を煽って積極的集中的に買わせようという、まさに売り手側の都合に塗り固められた一石二鳥の販売テクニックだろうと思います。

本当に年々世の中には余裕や潤いみたいなものが徹底的になくなっていくのをひしひしと感じます。
クリスマスケーキも、普通に食べられるなら嬉しいけれど、そのために何週間も前からせっせと予約しようなんて思わないし、そんなことにまで神経を張り巡らせるような行動はしたくはないのです。

たかだかクリスマスケーキ、それにふさわしい、自然なタイミングで買って、寒空の中を家に持ち帰るというあたりも情緒であったし、それもまた美味しさの一要素でもあったような気がします。

何事も、もう少しゆったり、自然に、楽しくいけないものでしょうか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です