『バイオリン名器の音色、現代モノと大差なし?』
Yahooのニュースを見ていると、上記のような見出しが目に止まりました。
読売新聞による 1月4日(水)の配信で、
『何億円もすることで有名なバイオリンの名器「ストラディバリウス」や「ガルネリ」は、現代のバイオリンと大差ないとする意外な実験結果を仏パリ大学の研究者らが3日、米科学アカデミー紀要で発表した。』
とあり、実はこんなことじゃないかと薄々は思っていたところ、あらためてこういう文章を読むとやはり驚かされるものです。
引用を続けると、
『研究チームは、2010年、米インディアナ州で開かれた国際コンテストに集まった21人のバイオリニストに協力してもらい、楽器がよく見えないよう眼鏡をかけたうえで、18世紀に作られたストラディバリウスや、現代の最高級バイオリンなど計6丁を演奏してもらった。どれが一番いい音か尋ねたところ、安い現代のバイオリンの方が評価が高く、ストラディバリウスなどはむしろ評価が低かった。』とのことでした。
最後は、『研究チームは「今後は、演奏者が楽器をどう評価しているかの研究に集中した方が得策」と、名器の歴史や値段が影響している可能性を指摘している。』と締めくくられていますが、これはきっと大きな波紋を呼ぶのではないかと思います。
ヴァイオリニストの間でも、もしかすると我々が思っている以上に新作を評価・信頼して弾いているのかもしれません。
というのも、やはりイタリアのオールドヴァイオリンなどはその素晴らしさはじゅうぶん認めつつも、どう考えてもあの価格は異常としか思えず、それほどの価値があるのかという点で疑問に感じておいでの方は少なくないと思います。
さらにはこれだけ科学技術が進んだ現在でも、300年前のクレモナの名器を凌げないというのも解せない話です。美術品なら話は別ですが、ヴァイオリンはあれほど単純構造の、「使われて、音を出す」という機能を持った楽器なのですから、ちょっとそこは不思議です。
世界的に有名な日本人の名工の著書によると、歴史的にも楽器として完成されて久しいヴァイオリン作りにおいては、最高の楽器作りとは、究極的には「完璧な模倣を目指す」以外にないと語られています。
それと、マロニエ君などにしてみれば、そこまで神経質に新旧のヴァイオリンの音色の質に厳格にこだわるのなら、ピアノでも現行品のすっかりペラペラになってしまった音は、なぜ昔の楽器と比べられないのかと単純に思いますが。
こういうと、決まって「ピアノは金属フレームにものすごい力で張弦してあるので、弦楽器とは違う」という尤もらしいお説が出てくるのですが、それは100年単位でみた場合の話であって、ピアノでも今のピアノよりも少し古い楽器のほうが遙かに力強くて麗しく、圧倒的に芳醇な音がすることは、実際には多くの人が大きな声では言わなくても、内心では認めることだと思います。
新しいヴァイオリンの良さが認められるのと同様に、少し古い時代のピアノの本当の素晴らしさも正しく認めてほしいものです。