ふと思い出した、暮れで混み合うスーパーレジでの記憶をひとつ。
レジの列に並んでいるときのこと、携帯でしきりに話をしている女性がマロニエ君のすぐ前にいました。
今どきですから、この状況がとくに電話をしてはいけないとも思いませんが、どこにも遠慮の気配というものが感じられないのは、やはり良い感じではありませんでした。
そのうち、商品満載のカートはそのまま置いて本人だけどこかに行ってしまっていなくなり、もうレジの順番が次だというのになかなか戻ってきません。間に合わないときは、当然ですがマロニエ君が追い越させてもらうつもりでした。
するといよいよというときになって、ちゃんと戻ってきて、当たり前のように列に復帰し、カートをちょっと前進させてレジに備えています。
ところがこの人、カゴだけをレジ係の前の台に差し出して、カートの下に積んでいる缶ビール(紙のパッケージで6本をひとまとめにしたもの)は一向にレジを通す気配がありません。
こちらから見ると、どさくさまぎれにそのまま通過するようにも見えました。
するとカゴの中の商品を計算し終えた係りの人がそれを目敏く見つけ、やや上半身を乗り出すようにして「そちらのビールもでしょうか?」と言ったのはさすがだと思いました。
そういわれた女性は、ああ…という感じでいかにも横柄な感じでその缶ビールを持ち上げようとしましたが、そのときの動作がいかにも雑で、パッケージの隙間に指を差し入れてぐっと引き上げたので、持ち上がった瞬間に紙パッケージが破れて、そのうちに2本ほどが床に転がっていきました。
落とした本人が棒立ちしている中、レジ係の人がすかさず飛び出てきて、すぐに1本拾いましたが、もう1本がなかなか見つかりません。
それから残りの1本をめぐって、あたりは大捜索となりました。
結局は、となりのレジ台の下のようなところへ転がっていたようですが、このとき2つのレジはすっかり動きが止まり、となりのレジ係の人も一緒に捜索に加わっていました。
その間、マロニエ君はじめ並んで待っている2列のお客さんは黙ってじっとその様子を見守っていました。
やっとのこり1本を店員さんが床に這いつくばるようにして見つけ出したので、めでたく缶ビールは元通り6本揃い、レジ係もやれやれという感じで所定の位置に戻ってさっそくバーコードを読み込もうとした瞬間、このお騒がせな女性の口から信じられないひと言が!
「新しいのと換えてもらえます?」「は?」「破れたから…」
なんとこの人、もともと自分が商品をレジ台に上げず、店員にいわれて持ち上げたところ、その動作が乱暴だからパッケージが破れてしまったわけで、誰が見ても100%この女性客の責任であることは衆目の一致するところでした。
ところが、そんないきさつなんてなんのその、とにかく金を払う以上は傷みのないまっさらの商品をよこせということのようです。
すかさずレジ係は「お取り替えします…」といってマイクで別の従業員を呼びだし、すぐに同じ物をもってくるように指示しましたが、その間、またぞろこちらの列はずっと待たされるハメになりました。
人に迷惑をかけてゴメンナサイのひと言もなく、おまけに交換するのは当然!みたいな態度で突っ立っているその姿は、ずうずうしいなんてもんじゃなく、思わずその拾い上げたビールのフタを開けて、頭からジャーッとふりかけてやりたくなりました。
変なものを目の当たりにして、帰り道もこの女性のことが頭に残ってムカムカきて、イヤな世の中だと思いました。