マロニエ君の音楽の先生のお一人は、ご主人が大学の先生ですが、この方はとにかく歩くことが大好きで、家には昔から車もありません。
毎日の通勤を市内の警固から箱崎のキャンパスまで、片道1時間半をかけて何十年も通勤されているというヘビーウォーカーです。往復で3時間、これを毎日と、大学以外にも大抵のところは歩いて行かれるようですから、その距離たるやたいへんなものです。
目と鼻の先でも車で行ってしまうマロニエ君なんかから見たら、人間離れした、ほとんど宇宙人のようにしか見えませんでした。
さてその先生曰く、これだけ日常的に歩くということは、とうぜん靴の傷みや消耗もケタ違いに激しいそうで、年に何度か靴を買い換えておられるようです。
昔は「履きやすい靴」=「高い靴」だったわけで、これだけ歩くからには足に悪い安物靴というわけにはいかないので、靴にかかる出費は相当のものだったそうです。
それが近年になってからというもの、履きやすい、足の疲れない、科学的にも理に適ったウォーキングシューズが出現してからというもの、すっかりこちらに移行して、値段も昔の数万円から、一気に5千円前後で事足りるようになったというのです。
考えてみると、昔はとくに革靴などは、みんなかなり無理をしながら履いていた思い出があり、形状が合わずに足の指にマメができたり、靴屋に補正に出したり、足の小指にテープを巻いたりといろいろやっていたことが思い出されます。ほとんど足を靴に合わせて慣れさせるような一面がありました。
それなりの値段でもこういう調子で、ましてや安物などは推して知るべしという気配でしたね。
ところが今はそういう意味では技術や研究が進んで、足に負担をかけず、軽くて、安いという、昔から見れば夢のような靴がごく当たり前のようになってしまいました。
とりわけウォーキングシューズなどの進歩は目覚ましいものがあり、そのノウハウが逆に革靴などにも活かされているように感じます。その点では靴は科学技術を反映したアイテムでもあり、ものにもよりますが、平均的にみれば新しいもののほうが進歩しているのかもしれません。
とにかくストレスのない快適なものを安価に選べるのは幸せなことだと、その先生はいとも簡単におっしゃいますが…マロニエ君はいまだに靴選びが下手でどうしようもありません。
ああ、靴選びになると気が滅入ってしまいます。