熾烈な競争

仕事の関係で印刷を依頼することがときどきあるのですが、近ごろのネットで注文する印刷業界の価格競争には凄まじいものがあるようです。

ネットが発達する以前の印刷業界を知る者にとっては、これこそまさに「価格破壊」と呼ぶに相応しいもので、日本中の大半の印刷会社が低価格をめぐって熾烈な競争を繰り広げるか、さもなくば廃業などに追い込まれているようです。

ひと時代前までは、印刷は中国が断然安いので、大手企業などの大量の印刷物や出版物は運送コストをかけてでもそちらのほうが安くつくので、国内の印刷業界は大変な状況らしいという話を聞いたことがありました。
そんな時期からさらに年月を経て、今では国内の印刷業もすべてではないかもしれませんが、この価格競争に打って出て、マロニエ君の手許だけでも、数社の激安店がリストアップされており、安い魅力には勝てずにこれをよく使っています。

しかも驚くべきは、昔ながらの「安かろう、悪かろう」ではなく、本当に高品質な製品がきちんと納入されてくるので、いやはやこれも時代かと驚くばかりです。

そのかわり、昔の印刷屋のような手間暇かけた手法ではなく、原稿はすべて発注者のほうで完成させなくてはならず、それなりにビジュアル系のソフトなども使いこなさなくてはならないという点もありますが、それさえクリアすれば、本当に信じられないような低価格で、従来の価格のものと遜色ない美しい印刷が仕上がってくるのですから、驚くやら、ありがたいやらです。

また一色刷と二色刷、さらにはカラー印刷という点でも、価格は大きく差が出るというのもこれまでの印刷の常識でしたが、今ではフルカラーが半ば当たり前のようで、さほどの違いはありません。これはおそらく印刷機が以前とは比較にならないほど発達、高性能になったためだろうと思われます。

まあ、利用者としては安いことは無条件にありがたいことなので、とりあえず歓迎なのは間違いありませんが、しかしこういう競争をやっていかなくてはならない今の厳しい世の中という観点で考えてみると、なにやら恐ろしいような気がするのも事実です。
しかも、相手はネットですから、日本中どこの印刷屋であってもハンディなくライバルとなるわけで、昔なら必然的に距離の近い、付き合いのある印刷屋であることは当たり前でしたが、そういう条件も無情に撤廃されたということでしょう。

現にマロニエ君がネットで利用している印刷会社も、ものによって価格と得意分野が異なるために数社を使っていますが、京都、名古屋というふうに、すべて遠方の会社で、もちろん社員とは一面識もないわけですから、利用しながらときおり驚いているところです。
先日も、ポストカードを作るのに、あるギャラリーの紹介で安い印刷会社(もちろんネットの)というのを紹介されましたが、同じ条件でも別会社を調べてみると価格はさらにその3分の1ほどだったりと、その凄まじさときたら大変なものです。

自分が利用していて言うのも憚られますが、ネットというのは社会をおそろしく厳しい、極限の競争を強いるものへと変えてしまったのは間違いないような気がします。

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