フランスのピアノソナタ

相変わらず厳しい気候が続きます。
今日は仕事の用事で、ある施設に行きましたが、すでに暖房は入っておらず、妙な底冷えの中で一時間弱を過ごす羽目になりました。なんとも難しい季節です。

このところエネスコのソナタに触発されて、最近はデュカスのピアノソナタを聴いていますが、これがなんともおもしろい作品です。
デュカスはご存じの通りフランスの作曲家で、ドビュッシーやラヴェルと同世代の大音楽家ですが、作品は少なく、一般的には管弦楽曲の『魔法使いの弟子』ぐらいしか知られていません。
彼はピアノソナタを一曲しか書きませんでしたが、考えてみるとフランスの作曲家によるピアノソナタというのはほとんどこのデュカス以外には思い当たりません。
もちろん探せば何かあるかもしれませんが、一般的にはゼロに等しいといっていいでしょう。

ピアノソナタ自体がそもそもドイツ的なものですから、その厳格な様式がフランスという風土や作風には馴染まないものだったといえばそれまでですが、それにしても、あれだけ多くのピアノのための傑作を生み出したフランスで、これというソナタがないというのは特筆すべきことです。

フォーレ、ドビュッシー、ラヴェル、サンサーンスなど、いずれもヴァイオリンやチェロのためのソナタはあるのに、皆申し合わせたように、まるで何かを避けるかのように、ピアノソナタだけは書いていません。これも驚くべきことですね。

デュカスのソナタは全4楽章、演奏時間40分に及ぶ大作で、フランス人の書いた作品でありながらも、ドイツ寄りな精神を感じさせ、さらにはリストを想起させるところのある無国籍な手触りのする作品といえるかもしれません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です