レインセンサーの害

「便利が不便」ということがよくありますが、いま使っているワープロソフトなども親切設計のつもりだろうと思われることが、却って使用者の自由がきかずに煩わしい思いをすることがあったりします。

最近痛感したのは、ある車のフロントウインドウを見たときで、昼間はまったくわからないものの、夜、対向車や街中の光を通して見ると、一面に昔のレコード盤のようにワイパーによる掻きキズが入っていて思わずゾクッとしてしまいました。
古いくたびれた車ならそういうこともあるとは思いますが、その他の部分はとてもきれいな車だっただけに、フロントウインドウの夥しいキズはいっそう目立っていました。

小雨だったこともあり、その原因がその車に装備されているレインセンサー付きのワイパーにあることは明瞭で、ほぼ間違いないと思われました。
レインセンサーというのは、普通の間欠ワイパーの機能を表向きは進化させたもので、ガラスに装着されたセンサーが雨滴の量などを感知して、それに応じてワイパーを動かすというシステムなのですが、これがマロニエ君は大嫌いです。

その理由は、やたらめったら必要もないのにワイパーが動きまくって、しかもその動きに一定のリズムがないので気分的に落ち着かないことと、たいして水滴もないのにワイパーがせわしなく動くことで、じわじわとガラスにキズを付けてしまうというわけで、なにひとついいことがありません。

そもそもマロニエ君はキズの付いたフロントウインドウというのが性格的に我慢できません。
先に書いたように昼間はほとんどわかりませんが、ワイパーの過剰使用によるガラスのキズは実は深刻で、だいいち夜間の安全運転の妨げにもなると思われます。

一般的な認識で言うと、ワイパーはゴム製品で、相手はガラスなので、これを普通に使うぶんにはキズが付くなんて考えたこともない人が大半だろうと思いますが、これが実は大間違いなのです。
車のワイパーは高速道路などでも使えるように、ガラスへの圧着力はかなり強いものでもあり、作動スピードもかなり速いので、ガラス面に水滴がじゅうぶんあればそれがクッションになってまだいいのですが、雨が少なければ単なる摩擦運動になるだけです。

よく見かけるのは、ほとんど雨は降っていないのに、赤信号中で停止中などもワイパーを動かしっぱなしにして平然としている人ですが、マロニエ君にしてみればあんなのは他人事ながら見ているだけで気になって仕方がありません。

レインセンサー付きのワイパーはこういうことを避けて、適宜必要なときに必要なだけワイパーを動かすというシステムであるはずですが、その設定プログラムはどのメーカーも過剰過敏に動かしすぎて、却って車に害を及ぼしているということです。あれなら従来の間欠ワイパーのほうがよほど単純でスッキリしていたように思います。

もうひとつ気をつけなければならないのは、意外に思われるかもしれませんが、ワイパーのゴムの部分というのは、実はボディを洗車するよりも頻繁に掃除しなくてはいけない部分だということ。
というのは、このゴム部分には常に小さな砂やホコリが蓄積されており、とりわけ野外駐車の車ではそれが激しいようですが、そういう目に見えない砂や鉄粉みたいなものをゴム部分にしこたまのせたまま、雨が降るとワイパーのスイッチが入り、ガラス面を猛然と往復しはじめます。
もうおわかりと思いますが、こういうことの繰り返しによってガラスには無惨なワイパーの掻き傷が徐々に増えていくわけで、ガラスの傷はいったんついてしまうと、とてもシロウトの手におえるものではなく、専門の業者に依頼して研磨してもらうか、最悪の場合はガラスごと交換するしかありません。

こうならないためには、ワイパーのゴム部分を濡れ雑巾で拭いてきれいにしておくことと、必要以上にワイパーを作動させないという心得があればすこぶる効果的です。マロニエ君は昔からこれを忠実にやっているので、十年以上乗った車でも、ワイパーによる掻き傷はまずありませんし、これはそんなに大変なことでもないのでオススメです。

ガラスがきれいというのは安全にも役立つし、無条件に気持ちがいいものです。

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