意図された行列

見ただけでウンザリさせられる人気店の行列ですが、とくにスイーツ関連のそれは土日などは普段の数倍にもなるようです。

ひとつの行列が、また別の行列を生み出すようで、ときにデパ地下内などは何カ所もの行列が発生、ほうぼうの通路をのたうちまわって、通行にまで支障が出ることも珍しくありません。

さて、人から聞いた話ですが、ケーキ類を買おうとしたものの目指す店は行列状態で、それに嫌気がさして普段から行列のない別の店に行ったそうです。ところがこちらもハッと気がつくと、ずらりと人が行列していることがわかったそうです。すぐにわからなかったのは、列の先頭がお店のショーケースから数メートル離れた場所にあったためとのこと。

しかも見た感じでは誰も買い物をしている気配がなく、一見したところではガラガラに見えたのだそうです。お店では若い女性の販売員に混ざって、一人の店長らしき中年男性が采配を振っているようで、行列のほうをちょろちょろ見ながら「はい、では販売してください!」といって、販売員に列の先頭をショーケースのほうへ誘導させたとか。

ちなみにこの店は、ことさら特別な店というわけでも人気店というわけでもなく、何年も前からこのデパ地下の同じ場所にずっとある、ごく普通のケーキ店だそうです。
もうおわかりだと思いますが、こうしてわざと先頭位置をずらして販売をストップし、お客さんを立たせて待たせることで、それがいかにも人気店の行列であるかのように状況をいわばねつ造しているというわけです。この人は、たまたまそのちょっとした舞台裏の様子を偶然見て憤慨した別のお客さん同士の会話からそれに気付いたのだそうです。
もちろん、いまさら列の最後尾に廻って並ばなかったのはいうまでもありません。

昔からサクラというのはありますが、なんとそれを本物のお客さんを使ってやるというのは初めて聞いたような気がしました。
商売人にとって、なによりも大切でありがたいはずのお客さんを、そんなことに利用して販売可能な状態でありながら、意図的に立って待たせるとは、なんたることかと思いました。

人気が人気が呼び、行列が行列を呼ぶという人の心理作用があるのはわかりますが、だったらバイトでも雇って並ばせるなりするべきで、本物のお客さんを人寄せの演出に利用して、立たせたまま不必要にお待たせをするなんぞ、客商売の禁じ手という他はなく、まったく驚く他はありません。

こんなことが行われているなんて、デパート側は知っているのか、あるいは知っていて黙認しているのか、今どきのことですからわかったもんじゃないと思いました。

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