とあるピアノ店から届いたDMを見てちょっとびっくりしました。
ボストンピアノが発売20周年を記念した初の記念限定モデルの案内で、そこには紺色にペイントされたボストンのグランドピアノが大きく写っていました。
白いピアノというのはありますが、それ以外は、ふつうピアノといえば黒か木目というのが半ば常識で、そんな既成概念にパッとひとふり水をかけるような新鮮さでした。
ごく稀には白以外にも赤や緑の原色に塗られたポップなピアノを写真などで見ることはありますが、それらは到底普通の家庭やコンサートの会場で使う感じではありません。
ところがこの紺色というのは、むしろ黒に近いシックな感じの中に、黒にはないやわらかさと華やかさのようなものがあって、意外に悪くないじゃないかと思いました。
これを見て思い出したのが、本で読んだずいぶん昔の話ですが、アンドレ・クリュイタンス率いるパリ管弦楽団が初来日してついに日本のステージに登場したときに、なによりも当時の日本人をアッと驚かせたのは、オーケストラのメンバー全員が黒ではなく紺色の燕尾服を着ていたということだったそうです。
当時の(今も多少はそうかもしれませんが)常識では燕尾服は疑いもなく黒というのが当たり前で、こんな意表をつくようなことをやってのけるとは、さすがはフランス!と感嘆したのだとか。
ステージのピアノは黒が圧倒的主流ですが、浜離宮朝日ホールには木目のスタインウェイDもあるし、先日見たNHKのクラシック倶楽部でジョン・ケージの特集でスタジオに現れたのも渋い木目のD型でした。
モノはピアノですから、あまり派手なのはどうかと思いますが、このボストンブルーのような上品な色ならば、ピアノにも多少いろんな色がでてきてもいいような気がしました。
このボストンブルーの限定モデルは5種類のグランドと3種類のアップライトの各20台で、合計160台が製作されるようですが、塗装はなんと「ドイツの工場で仕上げられる」と記されていましたから、ボディをわざわざドイツに送って、また日本へ送り返してくるということなのか…だとしたら大変な手間ですね。
よく読むと「スタインウェイピアノの艶出塗装仕上げと同じクオリティの塗装を使い…」とありますが、スタインウェイの工場でという記述ではなく、ならば優れた塗装は日本でも十分可能なはずで、なぜそうまでしてドイツの工場なのかはどうも理由や経緯がよくわかりません。
まあそれはともかくとしても、思いがけなくきれいな色のピアノで、機会があればぜひ実物の佇まいを見てみたいところです。