チョン・ミュンフンとアルゲリッチ

マルタ・アルゲリッチ&チョン・ミュンフン室内楽の夕べに行ってきました。

演奏は改めて言うまでもない大変見事なものでしたが、若干力を抑え気味に、軽く弾いていた印象でした。
さすがというべきかこの世界最高のピアニストを聴こうと、会場は平日にもかかわらずほぼ満席で、マロニエ君の左右の人もそれぞれ門司や熊本からわざわざ来たという声が聞こえました。

前半は連弾と2台のピアノで、ドビュッシーの小組曲、ブラームスのハンガリー舞曲から3曲とハイドンの主題による変奏曲。
後半はブラームスのピアノトリオ第1番で、ピアノはチョン・ミュンフン、ヴァイオリン:キム・スーヤン、チェロ:ユンソンといずれも韓国人によるトリオでした。

アルゲリッチの演奏は前半で終了したのですが、後半の開始直前、会場の中央が少しどよめいたと思うと、なんと着替えを済ませたアルゲリッチが客席に姿を現し、あたりに小さな拍手が起こりました。
準備されていたらしいシートの一つに腰をおろして、後半のブラームスのトリオを聴衆の一人としてゆっくり楽しんでいるようでした。
一般の人の中に現れても、やはりとてつもないオーラを発していて、そこにいるだけでありがたい気分になります。

それにしてもチョン・ミュンフンはピアニストとしても、あきれるばかりの腕前を持っていることが再確認できたコンサートでした。若い二人をがっちりと支え、ひたすら音楽に奉仕するその格調高い演奏にはただただ敬服するばかりでした。
以前聞いた話では、チョン・ミュンフンのピアノに驚いたアルゲリッチが、彼のお母さんに「もっとピアノを弾くように言ってくれ」と言ったそうです。
現役の指揮者であれだけピアノの弾ける人は、他にはアシュケナージ、バレンボイム、レヴァイン、プレトニョフぐらいでしょうか。
レヴァイン以外はいずれもピアニスト出身ですから当然ですが、チョン・ミュンフンもチャイコフスキーコンクールのピアノ部門で2位に輝いた経歴の持ち主ですから、いずれにしろとてつもない才能です。

久々に本物のコンサートに行った気がしました。

チョン・ミュンフンとアルゲリッチ」への1件のフィードバック

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    いつもの黒のドレスで、肩にかかる黒髪を払いのけながら(結構おばさん的貫禄)、ツカツカとオーケーストラの前に立ち現れたアルゲリッチ様。ズシッとピアノの椅子にお座りになって、オケの方をぐるっと見回して・・・始まった! ショパンコンチェルト。前奏が始まると同時に体を揺さぶり、指揮者の方も見ず戦い挑むe mollの旋律!(背筋がゾゾー!)
    皇帝ナポレオンか、否、暁のジャンヌ・ダルクか、何千という兵士を携え、ああ、アルゲリッチ様がそこに居わします!
    「あなたわかる?彼女(アルゲリッチ様)ラリってるでしょう?こりゃあやっぱり(ドラッグ?)やってるね!ね!」横に座っていたMunchen音大生ゾフィーは私の耳元でささやくのです。
    アルゲリッチパワーににボーっとしていたい私、「ああうるさい、黙っててよ!」私にはやってようがなかろうが、音楽とは関係ないことと思っていたのでした。
    しかし、どこのオーケストラだったかも、指揮者が誰だったかも、2楽章をどんなふうに弾いたかも、ほとんど忘れているのに、頭から離れないのが、弾きながらオケの方を睨み付け怒ってるアルゲリッチ様。ああ、私も若かったんですねえ。
    ヘラクレスザールで私が初めてアルゲリッチショパンを聴いた時の、あのオーラが今でも忘れられません。30年前の春のお話。

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